蘇州の名園
A「江南の園林、天下に甲たり。蘇州の園林、江南に冠たり。」と言ういわれがございますが、お聞きになったことはございませんか。
Cそうですね。蘇州といえば、美人に名園ですね。
Aはい。とくに、蘇州の名園はほとんどが個人の邸でございましたので、全体に、山、池、建物、草木の四つを巧みに組み合わせた、いわば小綺麗な感じのする庭園でございます。
Bうん、今日見てきた拙政園、留園、獅子林、それから滄浪亭といった四大名園のことをよく考えてみると、確かにそうでしたね。
Cでも、名園によってそれっぞれ特徴もあるようですわ。例えば、拙政園の場合は水の多さがとても印象的ですね。蓮の池だけでも、敷地の5分の3を占めるといわれたでしょう。
Aはい。たしかに、拙政園は池で有名なのでございます。楼閣や亭などが池にほとりに建てられ、それに低い欄干つきの平らな橋で連なっていて、名園全体が水に浮かんでいるかように見せております。
B獅子林の場合はまた別で、以下の石や築山の多いことで、有名になったのでしょう。
Cそうですね。ししに似た形の太湖石をいっぱい用いられたことで、獅子林と呼ばれるようになったのですね。
Bうん、天然石のほかに、宋の書道家の石碑も多いですね。
Aところで、留園の場合はどう違いますか。
Cそうですね。留園の場合は、、ああ、わかりましたわ。留園の場合は、その窓から長めに特徴があるのでしょう。
Bうん、留園の建築物はとても印象的ですね。
C留園の見所は中部の山水園でしょうね。限りある敷地に小綺麗な亭などが緑の木々や形の変わった石に囲まれていて、すてきですわ。
A拙政園の見所も中部びございますが、留園と比べて見れば、もっと開けて素朴で、いわば田園風景のようなものでございます。Cそうですね。あそこには「四面ホール」もありましたね。昔のひとはそのホールからしき折々の眺めを楽しんでいたのですね。
B拙政園の三十六鴛鴦館と十八曼陀花館もすばらしかったですね。
Aでは、滄浪亭について、どんな所が印象的でしたか。
B滄浪亭は四大名園のうちで一番古いんですね。
Aはい。
B印象的な所と言えば、その庭園の周りが水ばかりだったことですね。
C正確に言えば、三方に水があるのですよ。
Aはい。滄浪亭は実はその外側の水と内側の大和を巧みに利用して造られたのでございます。
Bそうですね。去年アメリカのニューヨークで大都会芸術博物館を見学しましたが、あそこには中国蘇州の名園に習って作れれた「明軒」がありましたね。
Aああ、あれは網師園の園中園である「簃春殿」に習って造られたものでございます。
Cさすがに蘇州ですね。どれもこれも名園ばかりですわ。
A名園と言えば、日本人のお客様に親しまれている所もございますが。
Cそうですわよ。寒山寺ですね。私は今度で二度目ですよ。おととしから、一度来たことがありますから。
Bわたしは寒山寺は初めてですけれども、唐の詩人張継の絶句「楓橋夜泊」は子供のころからよく知っているんですよ。
Aあ、そうでございましたか。朗吟していただけませんでしょうか。
Bはい、詠ませていただきます。
月落ち鳥鳴いて 霜天に満つ
江楓の漁火 愁眠に対す
姑蘇城外 寒山寺
夜半の鐘声 客船に至る
Aありがとうございました。皆様、感謝の拍手をお願いします。
B夕べ、寒山寺を一人でゆっくりと見て回りましたよ。ほら、大雄宝殿,蔵経楼、石碑楼、楓江楼、それから寒山、拾得の塑像など、一々見てきましたよ。
A毎年の大晦日になると、日本人のお客様が大勢寒山寺へ除夜の鐘を聞きにはるばる日本からお見えになります。
Cそうですよ。おととし、私も除夜の鐘を拝聴するためにわざわざ寒山寺にやってきたのですよ 。夜中の12時になると、和尚三打鐘を百八鳴らして、一年の煩悩をきれいにはらってくださいましたわ。
Bうらやましいですね。
Aところで、ヨーロッパにはピサと言う名高い斜塔がございますが、蘇州にも斜塔のあることをご存知ですね。
C知てますわ。虎丘塔ですね。
Aでは、どうして虎丘と呼んだのでございますか。
Cその丘に呉の初代皇帝の陵墓が置かれた後に、一頭の白い虎が現れお墓をっまもったので、虎丘と呼んだからだとか。そうでしょう。
Aはい。満点でございます。
Cそれから、その丘には、961年建てられた7層の塔があり、明の時代に地盤の緩みで傾き、今も15度傾いているので、「虎丘斜塔 」と呼ばれて、蘇州市のシンボルともなってきました。
A虎丘斜塔が千年以上たっても倒れないのは、その建築材料のおがけだと言われております。昔はコンクリートもなかったし、鉄筋もなかったのに、なかなか頑丈な塔ができたのは豚の血ともちごめを混ぜて作った「粘土」を使ったらでございます。
B昔の人はなかなかたいしたもんですね。
Cそうですね。蘇州の虎丘斜塔を見ると、ピサの斜塔のことも幾分分かってくるような気がしますわ。
Bおっ、偉い発見でしたね。