日语学习网
(8)お気に入り
日期:2013-12-27 20:18  点击:1121
お気に入り(8)

            五歳の男の子を連れた友達とばったり道で会った。 
   「随分、大きくなったね」 
   といいながら、ふと彼の着ている物をみたら、妙にお腹のところがふくらんでいる。 
   「腹巻きできさせてるの」 
   「そんなことないんだけと??????、どうしたのかしら」 
   彼女は、男の子の着ているダブッとしたTシャツを捲り上げた。中から出てきたのは、くしゃくしゃに丸められたこーデュロイの半ズボンであった。あるデザイン?メーカーのものだ。話によると、このズボンは彼のお気に入りで、冬場、ほとんど毎日はいていたという。 
   洗濯すると、 
   「いつ乾くの」 
   としつこと尋ねる。目を離すと生乾きでも幼稚園にはいていこうとするので、説得するのが大変だったというのだ。春先に、 
   「このズボンは寒いときにはくものだから、しまおうね」 
    といてタンスの奥にしまったのだが、そのときしまい場所をしっかり見ていたらしいのである。 
   「こんなに好きなの」 
   と聞いたらこっくりとうなすく。そして、 
   「今日のズボン、嫌いなんだ」 
   と訴えるのである。はいているのはふつうのジーンズの半ズボンである。 
   「どうして、ちっとも変じゃないわよ」 
   「かっこ悪いんだよ、ここのところが」 
   彼はポケットを指さして、口がとがらせる。母親にはかされたズボンが気に入らなくて、すきあらば自分の大好きなズボンにはき替えようと、隠し持ってきたのである。
   「五歳でねえ。それも男の子でねえ??????」
   私は感心半分、あきれ半分でため息をついた。私も子供のときには好きな服と嫌いな服はあったが、文句を言えば、
   「ふざけるな」
   と親に怒鳴られるに決まっていた。裾がびろびろに伸びたランニング?シャツで走り回っていた子供の姿は、遥か彼方に消えてしまったようだ。

分享到:

顶部
09/29 15:30