1、意見の述べ方
(2) 会議での反対意見の述べ方
<営業会議で>
司会 :ただ今の部長のご意見について、どなたかご意見はございませんか。
課長 :私は部長のご意見に異存はございません。
司会 :他のご意見の方はございませんか。
課長 :部長のご意見に対しては私も基本的に賛成です。しかし、二、三検討した方がいいと思う点がございます。
<課内での話し合いで>
課長 :この企画案でいくかどうか、そろそろ結論を出さなければならないが、どうしようか。
李 :このままでは議論は平行線ですし、多数決を取りませんか。
同僚1:李さんの意見に反対というわけではありませんが、私はまだ議論が不十分だと思います。
同僚2:私も多数決はどうかと思います。課としてのコンセンサスが不十分なところで多数決をとっても、後がうまくいかなくなる恐れがあります。
課長 :それもそうだな。じあ、もう一日、この件で話し合おうじゃないか。この案に不十分なところがあれば、明日までに対案を考えてきてほしい。みんな、それでいいか。
全員 :結構です。
常套表現と解説
・ ええ、でも、それはちょっと
そうかもしれませんが、でも・・・
確かにそういう見方もありますが、しかし~
そう言えないこともないですが、しかし~
おっしゃることはわかりますが、しかし~
△△さんのご意見にも同感できる点は多いのです
が、しかし~
・ それはどうかと思います<疑問>
基本的には賛成ですが、しかし、二、三検討した方がいいと思う点がございます
<問題提起>
失礼とは存じますが、敢えて直言させていただきます<直言>
お言葉ですが、もう一度考え直していただけないでしょうか<再考>
お言葉を返すようですが、どうしても部長の意見には納得がいきません。<不服>
・ ~たらいかがでしょうか
~方がいいのではないでしょうか
賛成するときは、「賛成です」「異存はありません」と相づちを打てばいいのですが、問題は反対するときです。日本人は「それは間違っている」のような断定的な言い方をされると、相手は面子を傷つけられたと感じ、相手から反感をかう恐れがあります。日本は「和」重視社会で、表だった対立は避け、「根回しー事前調整」で事態を解決しようとする傾向が強くあります。つまり、まだ議論で物事を決定するという習慣が企業文化として十分に定着していないのです。また、仮に論争の勝ったとしても、相手が受け入れてくれるとは限りません。
ですから、日本人相手に自分の意見を述べたり何かを提案するとき、一番有効なのは「相手に悟らせる」ということです。どちらが正しいかを論争するのではなく、「どちらが得か、どちらが有効か」を説得した方がいいのです。特に反対意見を述べるときは、全面否定をしないで、・のような前置きをおいて、相手の意見を一旦は認めた上で、「しかし、~」から自分の意見を述べ始めます。その場合も、・のように「~たらいかがでしょうか」(提案)とか、「~方がいいのではないでしょうか」(婉曲な勧告)とか、「それもいいですが、~という案もどうでしょうか」(対案)のように、別の見方もあることを示唆する言い回しをしすることが多くなります。そして、このように判断を相手に任せる言い方の方が有効になります。また、そうすれば、相手を尊重したことになりますし、少し狡いかもしれませんが、最悪の結果になった時でも自分の責任は回避できます。これはビジネスマンの知恵と言ってもいいでしょう。
なお、・ははっきり自分の反対意見を上司に進言したり上申するときの前置きで、当然、発言に責任が生じるのですが、「うるさい部下ほど能力がある」という言葉があります。ただ、日本の会社の中で上司に進言したり、会社の決定に反論するのはかなり勇気がいることです。