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最后的朋友 第九回
日期:2014-01-09 15:22  点击:1052
『君の命』 
 
シェアハウスのリビングでメイク術の勉強する美知留(長澤まさみ)。 
ソファーに寝転びテレビを見ているタケル(瑛太)。 
その側で、エリ(水川あさみ)テレビのチャンネルをガチャガチャと回す。 
「何やってんの!?」と友彦(山崎樹範)。 
「瑠可の試合やってないかなーと思って。」とエリ。 
「やってないよ! 
 番組表見ればわかるでしょう!?」 
「45チャンネルもあるのに。使えないなー。」 
「え...それってもしかして、遠まわしにテレビの持ち主のこと批判してる?」 
「そんなこと言ってないじゃん! 
 てか何最近!機嫌悪くない!?」 
「やめなよー。 
 なんか長年連れ添った夫婦のケンカみたいだよ。」とタケル。 
「あーあ!なんかしっくりこないなー。 
 瑠可がいないからかな。」とエリ。 
 
そこへ、美知留の携帯電話に、遠征中の瑠可(上野樹里)から連絡が入る。 
「もしもし!瑠可!!」 
美知留の声に三人が注目する。 
「そう!良かった!おめでとう!! 
 優勝したって!」 
「え!!」とタケル。 
「やった!」とエリ。 
「やると思ってたよ瑠可ちゃんなら!」と友彦。 
「シャンパン開けようタケル!」とエリ。 
「開けよう!シャンパン好き!」とタケル。 
「シャンパン好き!」はしゃぐエリたち。 
「みんな揃ってるよ。 
 エリもオグリンも、...タケル君も。 
 あ、代わろうか?」 
「いいよいいよ。 
 いちいち照れくさいし。 
 ...明日東京に戻るから、一度シェアハウスに顔出すよ。」 
「本当に?」 
「うん。」 
「...瑠可。」 
「うん?」 
「おめでとう!」 
「...ありがとう。」 
嬉しそうに笑う美知留。 
「じゃあ、みんなによろしく伝えといて。」 
そう言い電話を切る瑠可。 
「あ!ちょっと待って!! 
 ...」 
「あ...」とエリ。 
「切っちゃった!?」と友彦。 
「ごめん。瑠可照れくさいんじゃないかなー。」 
「電話口で、シャンパン開けたかったのにな。」とタケル。 
「ごめんね。 
 でも、明日ここに顔出すって。」 
「え!?」とタケル。 
「遠征先から戻るからって。」 
「...そっか!」とタケル。 
「あ、わかった。じゃあとりあえず、シャンパン開けよう! 
 前祝で!」 
「よし! 
 瑠可、おめでとう!!」「おめでとう!!」 
自分のことのように喜びながら、4人は乾杯する。 
 
自分の部屋の戸を閉めようとしたとき、タケルは瑠可の部屋を見つめ、 
そして瑠可の部屋に入っていく。 
ガランとした部屋。 
瑠可のベッドに腰掛け、公園でのことを思い返す。 
 
「俺は、俺は瑠可が好きだ!! 
 人間としてか...女としてか、 
 どっちかなんて聞くなよ! 
 でも俺は... 
 瑠可を支えたい! 
 瑠可を見失いたくないんだよ!!」 
タケルはそう言うと瑠可に駆け寄り抱きしめ、 
タケルに抱きしめられた瑠可は号泣した。 
 
部屋の前を通りがかった美知留は、瑠可の部屋でタケルが考え込んで 
いることに気づく。 
タケルが美知留に気づくと、美知留は笑顔で話しかける。 
「明日会えるね、瑠可に。」 
「...うん。」 
「結局引っ越しちゃったあとは、キャンプだの遠征旅行だのって 
 続いちゃって、瑠可に会う機会なかったもんね。 
 ...ねえ、瑠可って...タケル君と...なんでしょ? 
 林田さんじゃないんだよね。」 
「...俺と瑠可は...友達だよ。」 
「友達?」 
「...死ぬまでずっと変わらない友達。 
 そうありたいと思ってる。」 
美知留はタケルのその言葉に、不安な気持ちを抑えて微笑む。 
 
井の頭公園駅に到着する瑠可。 
久し振りの景色に、嬉しそうにシェアハウスへと向かう。 
 
インターホンを鳴らし、玄関の前に立つ瑠可。 
だが、誰も出てこない。 
ドアノブを回してみると、鍵は掛かっていなかった。 
「お、開いてんじゃん。」 
部屋の中は静かで、人の気配がない。 
食堂の扉を開けると... 
 
「せーの! 
 おかえりなーさーい!瑠可瑠可? 
 みんな君を待っていた?」 
("南部の唄~ジッパディ?ドゥーダー"のメロディー) 
タケルはギター、美知留はタンバリン、エリはマラカスを鳴らし、 
歌いながら出迎える。 
「おめでとう瑠可!!」とタケル。 
「おかえり!」とエリ。 
「おかえりなさい!!」と美知留。 
二階から駆け下りてきたオグリンが、瑠可の前で持っていた紙を 
ぱっと広げる。 
『優勝おめでとう瑠可』 
「勝った!勝ったぞー! 
 おめでとうございます!今の気持ちをお願いします!」 
そう言い写真を取るオグリン。 
「バカかお前ら!」 
「いいねー、その冷たいリアクション!」とオグリン。 
「瑠可だなー!」とエリ。 
「あ、そうだ!クラッカー忘れた!」とオグリン。 
「もういいよ。」 
「せーの!」 
「お帰り瑠可!!」 
 
歌いながら台所に入っていくオグリン。 
「七面鳥だよ今夜は? 
 もうそろそろ、焼けたかな!ヘイ!」 
そう言いオーブンを開けると、エリとタケルに頭や肩を叩かれる。 
「聞こえるでしょ!シッ!!」とエリ。 
「しかもまだですよ!!」とタケル。 
「ごめんなさい...」 
 
「ね、私何すればいい?」瑠可がキッチンにやって来た。 
「あ!いいからいいから!何もしなくていいから! 
 暑いから庭で涼んでて!」エリが部屋から追い出す。 
  
庭 
イスに座っている瑠可の後姿をしばし見つめるタケル。 
「...瑠可。おめでとう!」 
「ありがとう。」 
「良かったなー。」 
「タケルのお陰だよ!」 
「俺の?」 
「...タケルのお陰で、自信が付いた。 
 この世に、一人でも、自分のことをわかってくれる人が 
 いるってことが、こんなに心強いと思わなかった。 
 なんて言うかさ、いつも頭の上に掛かっていた雲が、 
 少し、晴れてきた、みたいな...そんな感じなんだ。」 
「これからは、どんどん晴れていくよ。」 
「そうかな。」 
「うん。 
 ...瑠可。 
 シェアハウスに戻ってきなよ。」 
「...」 
「瑠可がいないと、調子が出ない。 
 俺だけじゃない。 
 みんなもそうだよ。」 
「...」 
  
あのあと、瑠可は予定通り引っ越したのですね。 
このシーンの最後に、庭に座る二人を外側から捕らえるようなアングル。 
宗佑かと思いましたよ! 
 
七面鳥にリボンを巻きつけるオグリン。 
「ローストターキーが出来たよ! 
 瑠可ちゃん呼んできて。」 
「ちょっと待って。ほんとちゃんと出来てる?」 
「出来てるよー。」 
「私呼んでくるよ。」と美知留。 
「ごめんね!」 
 
庭へのドアを開けた美知留は、楽しそうに話し込むタケルと瑠可を 
見つめ...。 
 
「瑠可...。 
 あなたのあんな笑顔を見るのは、私は初めてで... 
 私がずっと捜し求めて、手に入れることの出来なかった幸せの中に、 
 あなた達はいるんだと、感じていた...。」 
 
ひと晩飲み明かした美知留たちは、そのままリビングで寝てしまう。 
瑠可の眠るソファーにタケルはもたれて眠っていて、 
寝返りを打った瑠可の顔がタケルに接近する。 
目を覚ました美知留は、そんな二人を見つめ...。 
  
すると、ドアチャイムが鳴った。 
美知留がドアを開けると、見知らぬ女性が立っていた。 
「朝早く申し訳ありません。」 
「いえ...」 
「あの、こちらに、水島タケルはおりますでしょうか。」 
「はい...」 
「私タケルの姉で、白幡と言います。」 
タケルの姉?優子(伊藤裕子)が言う。 
「お姉さんですか!どうぞ!」 
慌てて外の門を開ける美知留。 
「実は...今日実家で祖父の法事がありまして、 
 タケルも当然来るものかと思ったんですけど... 
 連絡が取れないもので。 
 家の者も心配しておりまして。」 
「そうなんですか。」 
「...そちらに、おりますんでしょうか。」 
「あ、はい。」 
優子は断りもせずに部屋に上がりこむ。 
「あの...でも、今はちょっと、」美知留が慌てて追いかける。 
 
タケルの寝顔を見つめながらゆっくりと歩み寄る優子。 
タケルのすぐ側で眠る瑠可の姿に、表情を曇らせ... 
 
「あの...起こしましょうか?」と美知留。 
「いえ。」 
優子はそう言い、タケルの側に紙袋を置く。 
「手作りのバナナブレッドです。  
 目が覚めたら渡して下さい。」 
優子はそう言い帰っていく。 
 
ほどなく、物音に気づいたタケルが目を覚ました。 
「おはよう。」 
「あ...タケル君!」 
タケルの手には、姉が持ってきた紙袋。 
「何これ...」 
「今、お姉さんがいらしてたの。 
 ご実家の法事に向かう途中とかで... 
 それはバナナブレッドだって。」 
その言葉にタケルは急に青ざめ、紙袋を床に落とす。 
「何でわかったんだ...」 
「え?」 
「...姉が来たってこと、誰にも言わないで。」 
「でも...」 
「言わないで!」 
「...わかった。」 
タケルは落ちたバナナブレッドを袋に戻し、部屋の奥へ。 
 
台所のゴミ箱に、優子が持ってきたバナナブレッドが捨ててあった。 
「あったまイテー。」瑠可が起きてきた。 
「今何時だ?」 
時計を覗き込むと、8時40分。 
「あ、ヤバイ。10時半の電車に乗らなきゃ。」 
「まだ時間あるから大丈夫じゃない? 
 あ、コーヒー飲む?」とオグリン。 
「あ!私も!」とエリー。 
「...あれ?ない。」 
「そういえばタケルは?」と瑠可。 
「早くに、仕事行ったみたい。」と美知留。 
「じゃあ...私も、出よっかな。」 
「え!?もう行っちゃうの?」とエリ。 
「うん。 
 実家にも寄りたいし。」 
「えー、また遊びにおいでよ!」 
「おぉ!」 
 
洗濯物を畳む美知留。 
「ただいまー。」タケルが帰って来た。 
「お帰りー。」 
「手伝おうか?」 
「え...でも、全部女の子だし。」 
「あ、そうか。ごめん。」 
「あ、じゃあ、シーツと、枕カバーだけは、お願いしてもいいかな。」 
「うん。」 
洗濯物を畳む二人。少し気まずい空気が流れる。 
  
そこへ、エリがやって来た。 
「美知留ちゃん、ちょっと話いい?」 
「うん。」 
「なんかね、契約の更新書類を、大家さんに出さなくちゃいけない 
 らしくて。 
 そしたらさ、美知留ちゃんの場合、今のところ定職についてなし、 
 保証人を立ててくれっていうの。」 
「保証人?」 
「美知留ちゃんの場合は、お母さん、だよね。」 
「...会ってないな...ずっと... 
 多分、男の人と、暮らしたりしてるんじゃないかな。 
 私が出てったら、すぐにでもそうしたそうだったし。 
 うーん...ちょっと...」 
「そっかー。じゃどうしよっかな...。」 
  
「一緒に行こうか?」とタケル。 
「タケル君が?」 
「うん。 
 このシェアハウスのこと俺が説明するよ。 
 その方が、お母さんもサインしやすいだろうし。」 
「そうだね!そうしてあげて!」とエリ。 
「うん。」 
「お願いしてもいいかな。ありがとう!」 
  
その時、シェアハウスの窓に宗佑(錦戸亮)の影が映り...。 
 
美知留は、タケルをともなって母親の千夏(倍賞美津子)に会いにいく。 
「そういう感じで、男女5人で部屋を分け合って暮らしているんです。 
 家賃も、5等分して。」とタケル。 
「男も女もごっちゃなんですか。」 
「そうですけど...でも、それぞれ個室なので、 
 心配なさらないで下さい。」 
  
千夏は美知留を隣の部屋に呼び、戸を閉めて話し出す。 
「あの人何!? 
 あのなりは、堅気のなりじゃないね。 
 夜の仕事でしょ。」 
「違うよ!タケル君は、」 
「あんたに貢がしてんじゃないの?」 
「そんなんじゃないよ!」 
「前付き合ってた笈川さんは、服装だって何だってきちっとしてたじゃ 
 ないの! 
 仕事だって役所づとめで堅いしさ、 
 どーしてそういう人と長続きしないかねー。」 
「お母さん...いつ宗佑に会ったの?」 
「お母さんは心配なんだよ! 
 私もさ、男には苦労するクチだからね、 
 ああいう顔のキレイすぎる男はさ...」 
  
タケルが部屋の戸をノックする。 
「あの...すみません。一つお願いがあるんですけど。」 
「何?」 
「その、及川さんって人が訪ねてきても、 
 部屋に上げたり、美知留さんのことを教えたりしないでほしいんです。」 
「ほっ、そんなのこっちの勝手でしょ。 
 それにさ、あの人には私だって多少の恩義があるし。」 
「恩義って何?」と美知留。 
「...」 
「まさか...お金借りたの!?」 
「ちょっと困ってたときに、ちょちょい、ってね...」 
「...」 
「そういうことも、もうやめてもらえますか?」とタケル。 
「はぁ!?」 
「彼は...美知留さんを家で虐待してたんです。」 
タケルの言葉に驚いて美知留を見つめる母。 
「気に入らないことがあると、殴ったり蹴ったり!」 
「...そういうことは...男だったら... 
 誰だってやるんじゃないんですか、多少...」 
「誰でもじゃありません! 
 そんな風に何気なく、許されていいことじゃありません!」 
「...」 
「母親として、そういうことから美知留さんを守ってあげてほしいんです!」 
「...」 
「お願いします!!」そう言いタケルは頭を下げる。 
「...」 
 
「母親として、そういうことから美知留さんを守ってあげてほしいんです!」 
タケルのこの言葉。 
タケルは家族に守ってもらえなかったんでしょう...。 
  
宗佑の病室を訪ねるエリ。 
病室に名札は付いているが、宗佑のベッドは片づけられていた。 
エリは通りがかった看護師に聞いてみる。 
「あの...こちらに入院していた及川宗佑さんって 
 退院したんですか?」 
「この間の!」 
「あ、どうも!」 
「実は及川さん、急にいなくなってしまって。 
 まだ退院できる状態じゃなかったのに。」 
「そう...ですか...。」 
  
エリは待合室で眼帯をした女性を見かける。 
「ごめん...」と隣の男性。 
「大丈夫だから。」 
「ごめん...本当にごめんね...。」 
  
この女性は、令奈(西原亜希)。 
彼女もDV被害者のようですね。 
 
「えーっ。最近そういうの流行ってんだー! 
 男と女が一緒に住んで入り混じっちゃってさ、生活するっていうの。」 
タケルに酒を注がれて上機嫌な千夏。 
「そうみたいなんですよねー。」 
「あ、私の頃もあったわね! 
 なんて言ったかしら。フラワーチルドレン! 
 そんな感じよ!  
 歴史は繰り返されるっていうけど、ほんとだねー!」 
「あの頃流行ってたものって、今振り返ってみてもいいですもん。 
 デザインも、服装もそうだし、音楽も!」 
「ローリングストーンズ!ボブディラン! 
 私の好きなのはね、ミック!」 
「あ!僕、ジョンが好きです、ジョンレノン!大好きです!」 
「真面目なんだ!なーんだ真面目なんじゃないのよ! 
 もう、こんな頭しちゃって!」 
タケルの髪を楽しそうにグシャグシャにする千夏。 
美知留はそんな母とタケルの姿に微笑み...。 
  
千夏は千夏なりに、美知留のことを心配しているんですね。 
  
帰り道 
「瑠可が言ってたの、本当だね!」と美知留。 
「何?」 
「タケルは、人を幸せに出来る男だって。」 
楽しそうに笑い合う二人。 
「私、もっと早く、タケル君と出会ってれば良かった。 
 宗佑に...会うより前に。 
 それで、もっともっと、好きになっとくんだって。」 
美知留はそう言い笑う。 
「...俺なんてダメだよ。」 
「どうして?全然ダメじゃないよ。」 
「欠陥人間なんだ。」 
「欠陥?」 
「実は...心臓が、人より小さくて、 
 ネズミぐらい...これ位しか...。」 
「...」 
「...あ、冗談だよ!」 
「え...」 
「まあ、半分本当だけどね。」 
「なんだ!びっくり! 
 あ...雨だ。」 
「傘...」 
「え?持ってるの?」 
「そう。今日天気予報で、雨振るって言ってて。」 
「さすがタケル君!」 
「いやいや。 
 はい!」 
「ありがとう!」 
  
傘の下、自分の腕がタケルにぶつかり意識してしまう美知留。 
「...」 
「美知留ちゃん?」 
「あ...私...ちょっと。 
 タケル君、先帰ってて。」 
「もうすぐ、家だよ。」 
「うん。 
 あ...あ、ちょっと、買いたいものあるから。 
 じゃあね!」 
「え?」 
美知留は雨の中タケルの傘から飛び出していく。 
  
LOFTで買物をする美知留に、松葉杖を付く人物が近づいていく。 
「美知留。」 
宗佑の声、姿に凍りつく美知留。 
「久し振り。 
 いつうちに帰ってくんの?」 
「...うちって...」 
「こんな具合だから、部屋の掃除とか、料理とか、 
 美知留が手伝ってくれると助かる。」 
「...」 
「もちろん、僕も出来ることは自分でするけど。」 
「...宗佑。 
 私は宗佑と別れたんだよ。」 
「... 
 手紙読んでくれた?」 
「...」 
「読んでくれてないよね。 
 何で来てくれないんだろうって思ったけど、 
 だったら、しょうがないね。」 
「...」 
美知留は商品を棚に戻し、走り出す。 
「美知留!!」 
宗佑の声に美知留が立ち止まる。 
「一緒に帰ろう。」 
「...」 
「美知留。」 
宗佑が美知留の腕を掴む。 
「宗佑...許して。 
 私をもう自由にして。 
 私...好きな人が出来たから。」 
「...」 
美知留の腕を放す宗佑。 
「嘘だろ? 
 ...信じないよ。」 
「本当。...本当なの。」 
「...」 
美知留が走り去る。 
 
 
タケルは美知留が走ってきたのに気づく。 
「美知留ちゃん!」 
「タケル君!」 
「どうしたの?」 
「うん。探してたものなかったから、タケル君に追いつこうと思って。」 
「ああ、びしょぬれだね。早く家に帰ろう!」 
「うん!」 
 
宗佑はあの雨の中、美知留を追いかけることはしませんでした。 
松葉杖のアップ...。 
  
仕事を終えたタケルに上司が言う。 
「水島君。来週から2ケ月仕事入れたから。」 
「は?」 
「この前CM撮った監督さん、今度映画撮るんだってさ。 
 でね、君のメイク気に入ったから、お願い出来ますかって。 
 いいよね?」 
「...はい!!」 
「よろしく!」 
  
モトクロス練習場でマシンの手入れをする瑠可。 
携帯が鳴る。 
「もしもし!」 
「俺さ、映画の仕事が決まりそうなんだ。」 
「そっか!良かったじゃん!」 
「瑠可の活躍に負けないように、俺も頑張るよ。」 
  
シェアハウス 
「えー、でもバーテンは辞めないでほしいなー、個人的に。」とエリ。 
「まだバイトは辞められないよ。 
 次があっても、その次はないかもしれないし。 
 今夜も今から遅番!」 
「前途洋洋だなー! 
 タケル君は映画。瑠可ちゃんは全日本選手権かー。」と友彦。 
「美知留ちゃんにも、アシスタントやってもらおうと思ってるんだ。」 
「...!! 
 あ、私も、足引っ張らないように頑張るね。」 
ぼーっとしていた美知留が慌てて答える。 
「あ、じゃあ...お祝い、する!?」エリが冷蔵庫からシャパンを出す。 
「えー、またー!?」とオグリン。 
「なーにがまたー、ですかぁ!?」 
シャンパンを思いきり振り出すエリ。 
  
早朝 
バイトを終えたタケルは、自転車でシェアハウスに向かう。 
地下通路から自転車を抱えて階段を駆け上がるタケルは、 
突然、棒のようなもので殴りつけられ、 
自転車ごとまっさかさまに転落する。 
激痛で動けなくなったタケルを睨みつけながら、 
宗佑が松葉杖を手に、ゆっくりと階段を下りてくる。 
逃げ出そうとするタケルを松葉杖で阻止する宗佑。 
「美知留に手を出すな。」 
「...」 
「わかったな!」 
「...」 
宗佑は松葉杖で思い切りタケルに殴りかかる。 
何度も松葉杖で叩き、そしてタケルの右手を踏みつけ...。 
  
インターホンの音に目覚めた美知留は、怯えながら外を確認し、 
ドアを開ける。 
すると、大怪我をしたタケルが倒れこみ...。 
「タケル君!!タケル君!!タケル君!!」 
  
モトクロス練習場、ロッカールーム 
瑠可の携帯が鳴る。 
「もしもし。 
 ...」 
  
線路沿いの道を走る瑠可。 
  
瑠可がタケルの部屋に駆け込むと、美知留、友彦、エリが泣きそうな 
表情を浮かべていた。 
ベッドにはタケルが寝かされている。 
「...タケル。」 
「...おかえり。」 
タケルは笑顔を浮かべて瑠可に言う。 
瑠可はタケルの手を握り締め...。 
  
「私のせいなの...。」 
美知留はそう言い、タケルの部屋を飛び出していく。 
  
美知留の部屋 
ベッドに座り考え込む美知留。 
部屋の戸がノックされる。 
「はい...」 
瑠可が戸を開ける。 
「瑠可...。」 
「美知留のせいじゃないよ。 
 悪いのはあいつで、あんたじゃない。」 
「...でも...タケル君のことは...私のせいなの...。 
 私が宗佑に言ったから...好きな人が出来たって。  
 そう言わなきゃ...宗佑が諦めてくれない... 
 そう思ったから、言ったの...。 
 でも...嘘じゃない。」 
「タケルが、好きなの?」 
首を横に振る美知留。 
「自分でもよくわからないの。 
 タケル君は...瑠可のことが好きだし... 
 瑠可は...タケル君のことを...」 
瑠可は美知留の隣りに座り、優しく肩を抱く。 
「タケルと私は、友達だよ。 
 美知留が思ってるのとは違うんだ。」 
「...」 
  
美知留はタケルへの思いを瑠可に遠慮しているんですね。 
タケルの傘から逃げ出したのも、これ以上タケルを好きになっては 
いけない、とブレーキをかけたのかもしれません。 
  
リビング 
「私油断してた。 
 多分もう...何も起きないんじゃないかって... 
 思ってたんだよね。」とエリ。 
「何で...タケル君が襲われたのかな... 
 まるで...思い出したみたいに...。 
 これから先...俺ら一人一人... 
 ずっと...ビクビクして、暮らしてかなきゃいけないって... 
 ことなのかな...。」声を震わせてそう言うオグリン。 
「...オグリン。 
 その言い方... 
 まるで美知留に出ていってもらえって言ってるみたいに聞こえる。」と瑠可。 
「そんなこと言ってないよ!!」 
「でもその方が楽だし、安全だって思ってるだろ?」 
「...」 
「心配なら、家に帰ってなよ。 
 私はアパート引き払って、ここに戻ってくる。 
 この家で、美知留を守るから。」 
「...」 
  
まだ42分45秒なのに、エンドロールが流れ始めます。 
  
美知留はスープをマグカップに入れてタケルに持っていく。 
「はい、どうぞ。」 
「ありがとう。」笑顔で答えるタケル。 
「...タケル君、大丈夫?」 
「うん。休んでれば、治るよ。」 
「...でも。」 
「...」 
 
病院 
レントゲン写真を見ながら医師がタケルに説明をする。 
右手の人差し指が、ぐにゃっと曲がってしまっていた。 
 
待合室で心配そうにタケルを待つ美知留。 
  
瑠可がアパートを引き払い戻ってきた。 
部屋には誰もおらず、テーブルの上には 
『検査の結果を聞きに 
 タケル君と病院へ行ってきます。 
 美知留』 
と書かれたメモがあった。 
  
シェアハウスの電話が鳴る。 
顔を強張らせながら電話を取る瑠可。 
「もしもし。」 
  
瑠可は一人で宗佑のマンションを訪ねていく。 
「どうぞ。」 
宗佑は瑠可が入ると玄関の鍵を閉め...。 
  
「すごい活躍だね。」 
宗佑はそう言い、瑠可の記事が載った雑誌をゴミ箱に捨てる。 
「君の家族に、手紙を書くことにした。 
 君の通っている精神科のことも、何もかも、 
 わかりやすく説明する。 
 解説本も添えてね!」 
「...」 
「お父さんやお母さんも、もうきっと、君のことを理解するだろうね。 
 もしもそうされたくないんだったら、」 
「勝手にしなよ。」 
「...」 
「私はもう、何も怖くない。」 
「...美知留は? 
 あの男と一緒か?」 
「だとしたら何? 
 美知留はもう、あんたの彼女でも、何でもないんだよ。」 
「...君が全部仕組んだんだろ。」 
「...違うよ。 
 美知留は変わったんだよ。 
 自分の足で立って、自分の力で生きていこうとしてる。 
 今美知留は、ちゃんとした男を、 
 あんたの何倍も優しくて、心が広くて、本当に人を愛せる男を、 
 好きになりかけてる。」 
「...」 
「美知留はこれから、いくらだって幸せになれる。」 
美知留がくれたお守りの入ったポケットをぎゅっと握り締める瑠可。 
「その邪魔を...あんたにだけは絶対にさせない!」 
「...何でそんなことが言えるんだ?」 
「...美知留を本当に愛してるのは...私だから。」 
「...」 
「あんたの愛なんか...本当の愛だとは思えない。」 
「...」 
暫くの沈黙のあと、宗佑は突然瑠可に襲い掛かる。 
宗佑を突き飛ばし、思い切り腹を蹴飛ばす瑠可。 
だが宗佑に足をとられ、倒されてしまう。 
瑠可の頬を殴りつけ、首を絞める宗佑。 
何とかその手から逃れようと、瑠可はありったけの力で宗佑を突き放す。 
宗佑は美知留が気に入っていたランプにぶつかり、ランプは粉々に割れる。 
瑠可は宗佑にカバンで殴りかかる。 
宗佑が瑠可をベッドに突き飛ばすと、瑠可は又カバンで反撃。 
瑠可をランプの破片に押し付けようとした宗佑は、 
今度は瑠可に馬乗りになり、腹を思い切り殴りつけると 
上着を引き裂き...。 
 
シェアハウス 
タケルの持つマグカップが床に落ちる。 
  
音を聞きつけ、美知留が駆け寄る。 
マグカップの取っ手を不安な表情で見つめるタケル。 
そんなタケルを美知留は見つめ...。 
 

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