Lesson 9:ちょっと濃い神戸弁
さて、今回はちょっとだけ濃い神戸弁をご紹介しましょう。
濃いと言っても、それほど濃いわけではありません。
標準語で『壊れた』という表現を神戸では『メゲた』と言います。
それでは、五段活用で…
メゲない
メギます
メグ時
メゲば
メゲ
(ほんまかいな?)
この様にメゲ、メギ、メグと応用によって変化します。
一般に『メゲる』と言えば、『落ちこむ』という意味で解釈されがちですので注意が必要です。
神戸でも、落ちこんでいる時に『メゲてる』という表現をする事がありますが、非常に少ないです。
年代にもよりますが、やはり『落ちこむ』と表現する事が多いでしょう。
他にも『凹む』と言う事がありますが、これは年代により左右されます。ちなみに私は凹むを使用します。
それでは、物に八つ当りをしている人を見てみましょう。
「何で入らへんねん!メグぞ!ダボ!」
神戸っ子らしい、異国情緒溢れる表現ですね。
日本語とは思えない発音と迫力です。
しかし、神戸っ子はさらに難解な言葉でも、当たり前の様に会話します。
まさと:「メグ、突かへんのか?」
めぐみ:「ウチは突かんけ、まーくん突かんか」
まさと:「お前、突かへんねやったら、俺もええわ」
めぐみ:「何で?突いたらええやんか?」
まさと:「ええ言うとーやろ!しまいにメグぞ」
※めぐみさんは、岡山県の出身の様ですね
ちょっと強引でしたね。
通常、人に対して「メグ」という表現は使用しません。
「しばく」、「どつく」、「いわす」等が人に対する表現です。
この場合、相手のニックネームが「メグ」という事もあって、わざわざ「メグぞ」と表現したのでしょう。
心憎い韻の踏み方です。
ちなみに和歌山では壊れた事を『モジけた』と表現する様です。
(ジかヂかは不明)
和歌山の方と話しをする時は、ザジズゼゾとダヂヅデドの区別が付き難いので特に注意が必要です。
例)全然(でんでん)
また、『痛めた』という場合、『ゆわした』と表現します。
※『いわす』と発音する人もいますが、正しくは「ゆ」です。
漢字では「癒わす」と書きます。「癒」という漢字は「いやす」、「病気を治す」という意味があるのですが、同意語である「瘉」には「病む」という意味があります。
「瘉」の漢字はあまり使う事がないので、「癒」を使っているのではないでしょうか?(喋る時に漢字は意識しないけど…)
たっちゃん:「あ~、腰いた~」
ケイちゃん:「腰どないしたん?」
たっちゃん:「腰ゆわしてもうてん」
ケイちゃん:「使いすぎちゃうん?」
たっちゃん:「なんでやねん!」
『痛めた』以外にも、物が軽く壊れた時にも『ゆわした』と表現する事もあります。
先の『メゲた』は完全に壊れた(修復は可能な)時に使用しますが、『ゆわした』は「何とか使えるかな?」程度です。
二度と使えない(修復不可能な)時は『逝ってもた』と表現します。
関西で「いわす」とは「殴ってヒーヒー言わす」という意味がありますので、関西弁初心者にはあまり使用をお勧めしません。
いらぬ誤解で揉め事になる可能性があります。
異国情緒溢れる街、神戸。
言葉も何となく、素敵です。