[白文]12.子貢曰、我不欲人之加諸我也、吾亦欲無加諸人、子曰、賜也非爾所及也。
[書き下し文]子貢曰く、我、人の諸(これ)を我に加えんことを欲せざるは、吾もまた諸(これ)を人に加うることなからんと欲す。子曰く、賜よ、爾(なんじ)の及ぶ所に非ざるなり。
[口語訳]子貢が言った。『私は、他人が自分にしかけて欲しくないことは、私も他人にしかけないようにしたい。』先生は言われた。『賜(子貢)よ、お前にできることではない。』
[解説]頭脳明晰な子貢は、理屈として孔子の説く「忠恕」の徳を深く理解していたので、孔子に向かって「自分がして欲しくないことは、他人にもしないようにしたいものです」と語った。孔子は子貢の「忠恕」の理解が十分に正しいことを認めたが、徳というものは理解するよりも実践することのほうが遥かに遠く難しいことを理論優位の子貢に教えたかったのである。そこで、孔子は「他人を自分と同等に敬う忠恕の徳の実践は、お前に簡単にできることではないぞ」と注意を促した。