[白文]13.子貢曰、夫子之文章、可得而聞也、夫子之言性与天道、不可得而聞也。
[書き下し文]子貢曰く、夫子の文章は得て聞くべし。夫子の性と天道とを言うは、得て聞くべからざるなり。
[口語訳]子貢が言った。『先生の文化儀礼についての考え方は聞くことができた。しかし、先生が人間の本性と天の道理についておっしゃることは、聞くことが出来なかった。』
[解説]孔子の側近くで長く仕えた子貢は、先生の礼や仁に根ざした行動様式については色々と聞く機会があったが、孔子の語る「人間の本性論」や「天道の原理(道理)」については詳しく聞く機会を得られなかった。儒教では、仁に根ざした道徳的な政治体制と文化形式が重視されるので、孔子は天の道(道理)や人間の本性のようなことについて門弟に丁寧に教えることは余りなかった。しかし、孔子自身は、天の道理(法則)と人間の本性(性質)について正確な理解を持っていたと考えられている。天命に従事して人生を生き、人間の善き本性を発揮して教育を行ったのが孔子なのである。