[白文]23.子曰、伯夷叔斉不念旧悪、怨是用希。
[書き下し文]子曰く、伯夷・叔斉(はくい・しゅくせい)、旧悪を念わず(おもわず)。怨み是(ここ)を用て(もって)希(まれ)なり。
[口語訳]先生がいわれた。『(周の殷に対する放伐に反対した伝説の忠臣である)伯夷・叔斉は、(不忠不義を許さぬ清廉な人柄だったが)古い悪事をいつまでも気にかけなかった。だから、人から怨まれることがほとんどなかった。』
[解説]伯夷・叔斉(はくい・しゅくせい)というのは、暴君の紂(ちゅう)が殷(商)の帝となっていた時代の伝説的な忠臣である。酒池肉林の悪政に耽る紂の元を去って、新興国の周の武王に従ったが、武王が武力で殷(周)を討伐しようとすると、武力で暴慢を諌める放伐(ほうばつ)に強く反対した。伯夷と叔斉は、暴力的な放伐ではなく平和的な禅譲(ぜんじょう)によって、天子の位を引き継ぐのが天の道理だと考えていたので、周が武力で天下に号令をかけると周の粟(ぞく)を食べることを拒否して、首陽山(しゅようざん)に隠棲しそこで遂に餓死してしまったという。