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伊勢物語(二)
日期:2014-05-26 14:58  点击:962
二 ながめくらしつ
 
 昔、男有りけり。ならの京は離れ、この京は人の家まださだまらざりける時に、西の京に女ありけり。その女、世人(よひと)にはまされりけり。その人、かたちよりは心なむまさりたりける。ひとりのみもあらざりけらし。それを、かのまめ男うち物語らひて、帰り来て、いかが思ひけむ。時はやよひのついたち、雨そほふるにやりける、
 
  起きもせず寝もせで夜をあかしては春のものとてながめくらしつ
 
 
【現代語訳】
 昔、一人の男がいた。都はすでに奈良の地から離れ、この今の都は人家がまだ定着していなかったころ、西の京にある女が住んでいた。その女は世間並みの人よりは美しく。さらにその容貌よりも心がすぐれていた。そして、一人身というわけではなかったらしい。それなのに、かの生真面目な男は、長い間いろいろと話し込んで帰ってきて、どういうつもりだったのだろうか。時は三月一日、雨がしとしと降っている折に贈ったのは次の歌だった。
 <昨夜は、起きるでもなく寝るでもなく、何となく夜を明かして、その挙句、春につきもののそぼ降る雨をぼんやり眺めて、物思いにふけっています。>

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