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伊勢物語(百二十三)
日期:2014-05-26 15:27  点击:768
百二十三 年を経て
 
 昔、男ありけり。深草(ふかくさ)にすみける女をやうやうあきがたにや思ひけむ、かかる歌をよみけり。
 
  年を経て住みこし里を出ででいなばいとど深草野とやなりなむ
 
女、返し、
  野とならば鶉(うづら)となりて鳴きをらむかりにだにやは君は来ざらむ
 
とよめりけるにめでて、行かむと思ふ心なくなりにけり。
 
 
【現代語訳】
 昔、ある男がいた。山城国の深草の里に住んでいた女を、しだいに飽きてしまったのか、このような歌を詠んだ。
 <長年住んだこの里を出て行けば、今も草深い深草の里は、ますます草が深い野になってしまうのだろうか。>
女が返し、
 <ここが荒れた草深い野になってしまうならば、私は鶉になって悲しく鳴いているでしょう。あなたはせめて、かりそめの狩りにでもおいでにならないでしょうか、いやきっと来てくださいますね。>
と詠んだのに心を打たれ、男は去ろうとする気持ちがなくなったのだった。

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