【「伊勢物語」について】
平安前期に成った歌物語の最初の作品。125の短い章段からなる。作者は不明で、数十年の歳月をへて複数の作者によって成立したと考えられる。
多くの章段が「昔、男ありけり」と書き出され、この「男」とは多くは六歌仙の一人・在原業平がモデルとされ、業平の実事と虚構が入り交じっている。このため、平安時代には「在五(ざいご)が物語」「在五中将の日記」ともよばれたらしい。
作品は主人公の元服の段に始まり、その死で終えるという一代記風にまとめられている。
◆在原業平
(825~880年)
阿保(あぼ)親王の5男で、行平の弟、妻は紀有常(きのありつね)の娘。「古今集」の代表的歌人で、六歌仙の一人。官位には恵まれなかったが、右馬頭、蔵人頭などを歴任。容姿端麗な風流人だったとされる。
◆書名の由来
古来諸説あるが、一説には、第69段の在原業平と想定される男が伊勢斎宮と恋に落ちる話が重要で中心をなす部分なので、この物語全体の名とした、また、本来はこの章段が冒頭にあったからとする説などがある。