◆清兵衛と瓢箪 ~志賀直哉
清兵衛は12歳の小学生。瓢箪が大好きで、持っている瓢箪をしきりに磨いては、飽きずに眺めている。父は、「子供のくせに」と苦々しく思っていた。ある日、いつも見られない場所に、20ばかりの瓢箪が下げてあるのを発見し、その中に5寸ほどの、彼には震いつきたいほどいいのがあった。彼はそれを10銭で買う。それからはその瓢箪に夢中になり、授業中も磨いていて、とうとう担任の教員に見つかってしまう。教員は瓢箪を取りあげ、家へも注意をしに来る。父は清兵衛をさんざん殴り、瓢箪を一つ残らず割ってしまった。取りあげられた瓢箪は、教員から小使いの手に渡り、骨董屋で5円の値で売れた。小使いはそれを誰にも口外しなかったが、骨董屋がその瓢箪をさる豪家に600円で売ったことを知る由もない。清兵衛は今、絵を描くことに熱中している。父はしだいに絵にも小言を言い出してきている。
清兵衛は12歳の小学生。瓢箪が大好きで、持っている瓢箪をしきりに磨いては、飽きずに眺めている。父は、「子供のくせに」と苦々しく思っていた。ある日、いつも見られない場所に、20ばかりの瓢箪が下げてあるのを発見し、その中に5寸ほどの、彼には震いつきたいほどいいのがあった。彼はそれを10銭で買う。それからはその瓢箪に夢中になり、授業中も磨いていて、とうとう担任の教員に見つかってしまう。教員は瓢箪を取りあげ、家へも注意をしに来る。父は清兵衛をさんざん殴り、瓢箪を一つ残らず割ってしまった。取りあげられた瓢箪は、教員から小使いの手に渡り、骨董屋で5円の値で売れた。小使いはそれを誰にも口外しなかったが、骨董屋がその瓢箪をさる豪家に600円で売ったことを知る由もない。清兵衛は今、絵を描くことに熱中している。父はしだいに絵にも小言を言い出してきている。