わたしのおとうさんは、おひげがもじゃもじゃで、おなか
がポコっとでていて、かおとうでだけまっくろにひやけして
いて、いつもたばこをすっています。ごはんをたべたら、その
ままいびきをかいてねているし、おうちのことをしてくれな
いといつもおかあさんにおこられているし、おこづかいもす
こししかもらえないみたいです。おしごと、おしごとで、いつ
もいそがしくておうちにもいないし、あそんでもくれないお
とうさんは、だめだめだなとおもっていました。でも、このま
えおうちのちかくのこうじげんばで、おおきなきかいにのっ
ておしごとをしているおとうさんをみました。あとでおとう
さんにきいたら、そのきかいはユンボといって、つちをほった
り、つみあげたりするきかいだとおしえてくれました。そんな
おおきなきかいにのっておしごとをしているおとうさんは、
おうちにいるおとうさんとはちがっていてすこしかっこよ
かったです。
わたしのおとうさんは、どけんやさんのげんばかんとくで
す。どけんやさんは、みんなのまちのどうろをこうじしたり、
おみせなどのちゅうしゃじょうをきれいにしたり、げんばの
おしごとだけじゃなく、かいしゃでしょるいというものをか
くおしごともあって、なんでもやさんだとききました。いつも
いつもいそがしくて、にちようびもおやすみがなくてあそん
でもらえないのも、かおとうでだけまっくろにひやけしてい
るのも、あしがすこしくさいのも、おしごとをがんばっている
からだとおもいました。そんながんばっているおとうさんに、
これからはすこしやさしくしてあげようとおもいました。い
つも、
「ぱぱ、やだ。」
「あっちいってよ。」
「ぱぱ、くさい。」
といったりしてごめんね。
はずかしくていつもはいえないけど、ほんとうはおかあさん
よりやさしいところとか、もんくをいいながらいつもおねが
いごとをきいてくれるところとかだいすきだよ。まいにち、ま
いにちおそくまでおしごとごくろうさま。こんど、おやすみが
あったらあそんでね。
「おばあちゃんにしてくれて、ほんとうにありがとう。」
おばあちゃんは、おおつぶのなみだをぽたぽたながしなが
ら、おかあさんとわたしたちに、こういってこえをかけたそう
です。
おたんじょうびがくるたびに、おばあちゃんは
「おたんじょうびおめでとう。ありがとうね。」
といいます。
おめでとうといわれるいみはわかるけれど、どうしてあり
がとうといわれるのかが、ずっとわかりませんでした。
そして、さいきんおかあさんにそのいみをきいてみました。
「あのね。こはねとおうすけがおかあさんのおなかにきた
ときから、おかあさんはまいにちはいて、たべものもたべら
れず、ねむれず、ほんとうにたいへんなおもいをしてきたのだ
よ。びょういんのせんせいから、もしかしたら、ふたごとして
うまれてこられないかもしれないといわれていたのよ。」
とおかあさんはこたえました。
まいにちいっしょにあそんで、けんかもしているおうちゃ
んと、いっしょにうまれてこられなかったかもしれなかった
なんて、わたしはめをおおきくしてびっくりしました。
そしてそのとき、わたしはおかあさんにいいました。
「もしかして、おばあちゃんは、わたしとおうちゃんがげんき
にふたりでうまれてきたことに、ありがとうといっているの
かな? 」
おかあさんは、にっこりわらっていいました。
「おばあちゃんは、まいにちまいにちしんぱいをして、げん
きにふたりでうまれてきますようにとおいのりをしていたの
だって。とくいのあみもので、ぼうしとおくるみをふたつずつ
つくって、くびをながくしてまっていたのだって。だから、げ
んきにうまれたふたごのおばあちゃんになれたことがうれし
くて、おたんじょうびがくるたびに、ありがとうねといってい
るのじゃないのかな? 」
わたしは、なぜかどきどきしました。ことばではうまくせつ
めいできないけれど、しんぞうのおとがきこえてきそうなく
らい、どきどきしました。
そして、とてもしあわせなきもちになりました。
おばあちゃんのことは、いままでもだいすきだったけれど、
もっともっとすきになりました。
「こはね。おかあさんから、ひとつていあんがあります。つ
ぎのおばあちゃんのおたんじょうびにおめでとうとありがと
うをいってみたらどうかな?おばあちゃん、きっとおおつぶ
のなみだを、ぽたぽたながしながらよろこぶとおもうよ。」
おかあさんは、わらいながらいいました。
おばあちゃんのよろこぶかおがたのしみです。