ぼくのひいばあちゃんは、今年の八月二十一日に、百さいに
なります。かみはまっ白で、歩けないので車いすをつかってい
ます。九十六さいまでは、一人ぐらしをしていたけど、今はし
せつでくらしています。
ぼくが小さいころ、ひいばあちゃんの家に会いに行くと、
「はるちゃん、よう来たねえ。」
と、よろこんでくれました。お母さんが、ひいばあちゃんの家
のそうじをしている間に、ぼくたちはトランプをしてあそん
だり、ぼくのかいた絵を見せてあげたりしました。ひいばあ
ちゃんは、ババぬきをするのがすきでした。そして、いつもぼ
くのかいた絵を見て、
「はるちゃんは、じょうずだね。」
と、ほめてくれました。
でも、今はぼくのかおも名前もわすれてしまいました。さい
しょは、かぞくの名前もかおもわすれてしまうなんてふしぎ
だな、と思いました。お母さんが、
「年をとると、だんだんわすれてしまうことがふえていくん
だよ。でも、はるたちがおぼえているからいいんだよ。」
と、話してくれました。ひいばあちゃんがぼくたちのことをわ
すれてしまって、かなしいけれど、元気でいてくれるからうれ
しいなと思いました。
今、ぼくたちきょうだいがしせつに会いに行くと、ひいばあ
ちゃんは、ぼくたちのかおをじっと見つめます。ぼくのお母さ
んが、
「ばあちゃんのひまごだよ。」
と、いうと、
「私のひまごかな。」
と、目をほそくして、にっこりわらって、
「もじょかねえ。」
と、何どもいいながら、ぼくたちの手をにぎったり、ほっぺた
をなでたりしてくれます。
ひいばあちゃんの手は、かさかさしているけれど、あったか
くて、とてもやわらかいです。
ひいばあちゃんは、その手でむかし、きものをぬうしごとを
していたそうです。ぼくのお母さんが赤ちゃんの時にきたも
のを、ぼくのいもうとたちもおみやまいりの時にきました。何
十年も前のきものだけど、とてもきれいな色です。お母さん
は、
「これは、お母さんの宝ものだよ。はるたちの子どもが女の子
だったらきせたいな。」
と、だいじにしまっています。ぼくもその時まで今のまま、き
れいな色だったらすごいなと思います。
八月二十一日、ぼくたちはきょうだい三人でプレゼントを
もってひいばあちゃんに会いに行こうと思います。
「百さいってすごい。ひいばあちゃんおめでとう。もっと、
ずっとずっと長生きしてね。」
「長生きしてくれてありがとう。」
と、大きな声でいおうと思います。その時、また、にっこりわ
らって
「もじょかねえ。」
と、ぼくたちの手をにぎってくれるのが楽しみです。