八月、ぼくの誕生日にじいちゃんからプレゼントをもらっ
た。「一輪車かぁ。」喜びよりも、不安が大きかった。「ぼく、
乗れないのになぁ。でも、せっかくじいちゃんが買ってくれた
んだ。乗れるようになりたい。」これまで、一輪車に興味のな
かったぼくが、乗れるようになりたいと思ったしゅん間だっ
た。
練習が始まると、お父さんやお母さんが応援してくれた。応
援にこたえるようにその日から転んでも、転んでも練習した。
なかなか思うように、乗れない。すると、次の日、じいちゃん
が、手すりを作ってきてくれた。
「じいちゃんありがとう。」
何も言わなかったが、にっこりとした優しい目がぼくを勇気
づけた。
その日から、じいちゃんの手すりで練習が始まった。
手すりがあれば乗れると思ったが、つかまって立つのが
やっとだった。気をぬくと、前や後ろに動いて、どうしてもバ
ランスとれない。何度も挑戦するが、うまくいかない。
「さくやがんばれ。」
振り返ると、お父さんがにこにこしながら、練習を見ていた。
「よしっ。」一輪車に乗った。すると、不思議と落ちずに乗れ
た。うれしくなって、お父さんの方を見ようとしたしゅん間、
転んでしまった。足を強く打ち、痛かった。心配そうに、お父
さんが、
「今日は、もうやめたら。」
と言ってくれたが、こつをつかみ始めたぼくは、
「いや、まだ続ける。なんかできそう。」
一輪車を起こし、練習を続けた。その日のおふろの中で、
「いつもがんばっているさくやを見て、お父さん、うれしい
ぞ。」
てれくさそうに顔を洗うお父さんの一言がぼくの心をゆさ
ぶった。「明日から、もっとがんばるぞ。」
それからも、毎日、足を打ちながら、痛い思いをしながら、負
けずに続けた。練習が、いやになる日もあった。そんなとき、
決まって家族の見守りがささえになった。こんなに、一輪車に
乗りたいと思ったことはない。どうしても、乗りたかった。そ
んな気持ちにさせてくれたのは、じいちゃんだったし、お父さ
ん、お母さんだった。「家族っていいな。」
一輪車の練習を通して、ぼくは、家族の大切さとつながりを
感じることができた。「家族のみんな、いつもささえてくれ
てありがとう。そして、ぼくに一輪車というプレゼントをくれ
たじいちゃんありがとう。」
そして、ついに一輪車に乗れる日がやってきた。家族が見守
る中、いつものように手すりにつかまり、いつものように手を
はなして、転ぶと思った時、
「さくや、がんばれ。」
みんなの声援が、ぼくを一輪車に乗せた。