新感覚派
雑誌「文芸時代」(1924〜27年)に結集した、横光利一、川端康成、中河与一、今東光、片岡鉄平などの文学者たち。関東大震災後のモダン都市文化を基盤とするその感覚の斬新さ、暗示や象徴に依拠した手法に、文芸批評家、千葉亀雄が文芸時評(「新感覚派の誕生」、24年)において「新感覚派」なる呼称を与えたことが、流派名の起源とされる。流派たるにふさわしい確固たる理論的基盤があったわけではないが、佐藤春夫、芥川龍之介などの主知主義的作風を継承しつつ、第1次大戦後ヨーロッパのダダイズム、シュルレアリスムをはじめとするモダニズム芸術の影響下、諸感覚の再編成を梃子(てこ)として、自然主義リアリズムからの解放を実現しようとする意図は広く共有されていた。翻訳小説と見まがうばかりの新奇な文体が、そうした意図実現のための主要な手段となったことは、派を代表する存在、横光利一の初期作品にも明らかである。掛け声や方法意識が先行した感のあるこの運動は、元号が昭和に切り替わった頃から急速に終息に向かい、横光、川端はそれぞれに独自の道を志向し、「文芸時代」も廃刊に至る。