僕は、母が嫌いでした。中一のころは、毎日のようにケンカをしていました。しかし、僕の母さんは、本当は尊敬できる人のはずです。母さんは、中学、高校、大学、すべて地域のトップ校で、優秀な成績をおさめていたらしいです。そして、大学卒業後は、資格を取って、キャビンアテンダントの職業について、まさに、エリートの道を歩んできた人です。今は退職してパートをしていますが、それでも僕一人を養っていける財産と生活力があり、本当に尊敬できる人です。だが、唯一どうかと思う点があります。それは、天狗になって、いつも上から目線で説教してくる点です。テストでミスをした時は、
「こんな問題も間違えるの?私が小さい時、こんなテスト満点取れてあたり前よ。」
と僕に言いました。説教の途中で、毎回自分と比べるところがいちいちムカツクのです。
「ちゃんと勉強しているの?小さいころの私の努力と比べものにならないわ。」
これは、僕の内申が下がった時に、言った一言です。この一言で、僕のプライドはかなり傷つけられました。本気で母さんが嫌いだと思いました。母さんに認められたくて、一生懸命勉強をがんばっているつもりなのに、母さんは僕の気持ちにも気付いてくれず、ほめてもくれないのです。中一のころは、本当に寂しい思いをしました。そして、ある日いつものようにケンカをしていましたが、その日の母さんの発言はひどかったです。怒りがつもりにつもって、思春期の僕は、さすがに耐えられず、ついに怒りが爆発しました。感情がむきだしになって、言葉となり、僕は母さんに反抗しました。
「だまれ!うるせぇ!俺はお前よりすげぇんだよ!ふざけんな!」
僕は泣きながら叫びました。
「じゃあ、なにがすごいの?」
母さんの冷たい対応に、僕はさらに怒り狂いました。
「これから証明してやるよ!くそババァ!」
しばらく沈黙が続いたあと、
「いいわ、わかった。」
と母さんは言い、僕の部屋から出ていった。僕と母さんはケンカ中に訳のわからない約束をしてしまいました。
あの約束で、母さんは僕のライバルとなりました。そして、母さんは僕の目標となりました。学校では、母さんを意識し、トップになれるように勉強をがんばっています。しかし、なかなかうまくいかず、時おり心がくじけそうになりました。でも、あの約束で、僕は何度も立ち直ることができました。母さんを超えるんだ、という気持ちが強かったからです。家では、あの約束をした以来、母さんは上から目線の態度をとらなくなるようになりました。そしてなにより、僕のがんばりを認めてくれるようになりました。
あの約束、いまだに訳がわからないと思います。ただ親に失礼なことを言っただけなんじゃないかって時おり思います。でも、あの約束のおかげで、僕はふたたび、母さんのやさしさと偉大さに気付くことができました。母さんはやっぱり尊敬できる人だと改めて実感することができました。母さんはすごい人だから、越えられるか、正直不安です。しかし、約束は守るべきものだから、どんなに困難でも、どんなに時間をかけても、僕は母さんに自分はすごいやつだということを必ず証明したいと思います。
母さん、あの時くそババァといってごめんなさい。そして、僕に向上心を与えてくれてありがとう。だから、新しい約束をさせてください。大人になって、母さんよりすげぇやつになって、必ず親孝行するから。