仁徳天皇の皇后、磐姫(いわのひめ)はひどく嫉妬深い女性として、『古事記』『日本書紀』に描かれています。『万葉集』にも、磐姫の作とされる、天皇を慕う情熱的な歌が載っています。彼女は、天皇が侍女や妃を宮殿に入れることを許さず、何かしらの気配を感じ取ると地団駄を踏んで口惜しがったといいます。
ところがあるとき天皇は、美しいと評判の黒日売(くろひめ)を宮中に召し上げました。しかし黒日売は皇后の嫉妬をおそれ、船で故郷に逃げ帰ろうとします。その船出を嘆いた天皇が歌を詠んだところ、磐姫はひどく怒り、黒日売を船から追い下ろさせ、陸地を徒歩で行かせたのです。
またあるとき天皇は、磐姫が留守の間に、八田郎女(やたのわきいらつめ)と結婚します。それを知った磐姫は宮中に戻ろうとせず、山城国筒木の宮に籠(こも)ってしまいました。仕方なく天皇は、自ら磐姫を迎えに行ったといいます。