日本で使われている日本語
拝啓
田中先生、お元気でしょうか。ボストンではいろいろお世話になりました。東京に来てから今日でちょうど3か月になりますが、やっと日本の生活にも慣れてきました。先生に教えていただいた日本語を使って毎日何とか生活していますが、いろいろ面白いことがあります。
まず、日本語のなかに片仮名やローマ字で書かれた外国語がとても多いのにはびっくりしました。ホストファミリーのお母さんが読んでいるファッションの雑誌を見たら、「ゴージャスでモダンなフィーリングにフィットする新しいタイプのホームウエア」というのがありましたが、こういうのが多くあります。テレビを見てもコマーシャルで外国人が多く出てきて、たくさん外国語を使っています。町を歩いていると意味がわからない英語が書いてあるTシャツを着た若者をよく見ます。また、私がアメリカ人だからでしょうが、英語の言葉をたくさん使って話をする日本人が多いです。親切のつもりで英語の言葉を使うのでしょうが、発音が日本的なのでわからないことがよくあります。
それから、日本語の文法のことですが、短くした形がたくさん使われています。「きのう飲みすぎちゃって今日少し頭が痛いです」、「今日勉強しなきゃいけないの」、「きのうはゆっくり寝れた」「明日来れる?」などいろいろあります。アメリカでは、「飲みすぎてしまって」、「勉強しなければ(しなくては)」、「寝られた」、「来られる」と言いなさいと教えられたので短い形を聞いた時はじめはわかりませんでしたが、今ではすっかり慣れました。お父さんは短い形がきらいらしく、「寝れた」、「来れる」という形を聞くと、「今の若い人は正しい言い方を知らない。もっと日本語を勉強したほうがいいね」と言っていつもいやな顔をします。でも、言葉はだんだん簡単な形になるのが普通だから、短い形が多くなってもいいのではないでしょうか。
お父さんの話では、この頃敬語の正しい使い方を知らない人が多くなっているそうです。会社の部下が部長のお父さんに全然敬語を使わなかったり、敬語を間違って使ったりすることがよくあるそうです。私も日本人がどういう時どんな敬語を使うか気をつけて聞いていますが、思ったほど敬語は使われていないようです。「ゴルフをされますか?」、「明日ミーティングに行かれますか?」のように受け身の形を使って敬意を表す人が多いようですが、どういう時に受け身の形を使い、どういう時に「いらっしゃる」、「お読みになる」の形を使うかくわしいことはよくわかりません。知らない人や目上の人には敬語を使いなさい、とアメリカで勉強したのでそうするのですが、敬語を使うと、「そんな堅苦しい話し方はしなくてもいいです。普通の話し方をして下さい」とよく言われます。大学の先生やお父さんの友達と話をする時は、アメリカで勉強した敬語を使って話すようにしていますが、まだまだむずかしいです。
日本の習慣がまだよくわからなくて、毎日いろいろ変なことをしていますが、元気で生活しています。来週ホストファミリーと一緒に京都に行きます。また京都から手紙を書きます。
田中先生
12月7日
デービッド・グリーン
☆ 次の質問に答えなさい。
1.これは誰から誰への手紙ですか。
2.グリーンさんが東京に来たのはいつですか。
3.グリーンさんは一人でアパートに住んでいますか。
4.グリーンさんがびっくりしたのはどんなことですか。
5.グリーンさんが日本人の使う英語の言葉がわからないのはどうしてですか。
6.お父さんは短い形が好きですか。
7.グリーンさんは短い形がたくさん使われていることについてどう思っていますか。
8.お父さんの話で、この頃多くなっているのはどんな人ですか。
9.グリーンさんは敬語の使い方がよくわかりますか。