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『土のこやし』27
日期:2016-03-18 15:50  点击:455
27. イマジネーション
 
実業団ラグビーのかつての覇者、神戸製鋼の主将だった、平尾選手が、引退するとき、ある雑誌に文章を寄せて、次のように言っています。
 
今後のスポーツチームのあり方は、全体が一つの目的に向かって、一糸乱れない団結を誇る、個々を捨てて全体につく、言われたことを忠実に実行するという、今までのような、いわば旧来の体育会的生き方でなく、個々人がその場その場で、自分の役割を自覚して、その場で判断して行う、個々人がイマジネーションを持ち、それに従って行為する、そういうものがなければならない。会社組織でも事柄は同じだ。
 
ここでイマジネーションという言葉が使われているのが興味を引きました。イマジネーションとは、一般的に言うと、目の前に存在しないものを目の前にあるように想像出来る能力といえます。ないものを仮にあるとして考えられることです。目標とか理想はイメージの代表的なものです。これらは目に見えているものではありませんが、そういうものがイメージされないと次の行動が適切にとれません。抽象能力もイマジネーションの産物です。与えられた全体の構造とか、筋道は、目に見えないけれどもその底にあるもので、直接見える形としては与えられていません。しかし、そういったものを承知することなしには、適切な生活は出来ないのです。
 
今はいろんな意味で、イマジネーションに欠けている時代です。例えば、映像の時代などといって、テレビに代表されるように、何についても、映像がすぐ目の前に与えられ、そして、人々はそういうものに頼って、自分ではまさに事柄をイメージ、想像できなくなっています。映像過多です。
 
イマジネーションの能力は、言葉によって訓練されます。例えば、「美しい女」などという言葉が、言葉として小説のなかなどに書いてあれば、我々はどのような人か、小説は絵ではありませんから文脈から想像するわけです。ところが、例えばテレビを見てしまうと、具体的にそこに、美しい女の見本が出てきてしまい、想像を働かす余地がありません。こういうことの積み重なりが、イマジネーションを貧しくし、理想や、抽象能力を欠如させてしまうのです。

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