むかしむかし、あるところにおじいさんとおばあさんが住んでいました。ある日おじいさんが裏の畑で大きなうりをみつけました。
さっそくおじいさんは持ち帰り、おばあさんと二人瓜を切ろうとします。
「おじいさん、これだけあればしばらく食べ物に困らないですね」
「んだんだ。うりはぬかづけにしてもうまいからなあ」
すると、うりの中から「待って」と声がします。
おじいさんおばあさんが「え?」と思ってると、うりはペカッと割れて、中からそれは可愛い女の子が出てきました。
「おお…なんと可愛らしい。これは神様からの授かり者に違いないわい」
そしてうりからうまれたので瓜子姫と名付け、育てることにしました。瓜子姫はそれはかわいい女の子に成長していきます。
毎朝おじいさんは山へ芝刈りにおばあさんは川へ洗濯に出かけていきます。瓜こ姫はその間家でギーコットン、ギーコットンと機織りをしていました。
瓜子姫は機織が大好きなのです。また、機織にあわせて歌を歌うのが好きでした。
ある日いつものように瓜子姫がギーコットン、ギーコットンと機を織りながら歌っていると、その音にあわせるようにカァ、カァと声がします。
なんだろうまたギーコットン、ギーコットンと織ると、やはりカァ、カァと声がします。
窓の外を見ると、木の枝にとまった一羽のカラスがじっと見ています。どうやらこっちの音にあわせて鳴いてるようです。瓜子姫は楽しくなって
ギーコットン、ギーコットン、
するとカラスが
カァ、カァ
こんなことを繰り返してるうちに瓜子姫はすっかりカラスと仲良くなった気がして、嬉しくなりました。
さておじいさんが毎朝仕事に出る前に必ず瓜子姫に注意しておくことがありました。
「瓜子や、この山にはあまのじゃくという悪い鬼の子が住んどるんじゃ。るすの間あまのじゃくがやってきても、ぜったい開けちゃいかんよ」と。
あまのじゃくというものはどういうものかわかりませんが、おじいさんの話ではトゲだらけの恐ろしい姿をした女の子で、性格がひねくれてるということでした。
瓜子姫はおじいさんの言いつけを守って、留守中はけして扉を開けませんでした。
こうして何年かたちます。瓜子ひめは年頃の娘となり、ますますその美しさに磨きがかかってきます。ほうぼうから「嫁に来てくれ」と声がかかります。瓜子姫の評判は村中に広がりました。
そのことにムカムカしていたものがありした。例のあまのじゃくです。
「ふん、あんな女のどこがいいんだか。私のほうがよっぽど可愛い」
あまのじゃくはとてもひねくれた性格です。瓜子姫が幸せになるのが許せないのです。どうしても邪魔したくなってきました。
おじいさんおばあさんが出かけているスキに、あまのじゃくは瓜子姫を訪ねていきます。
瓜子姫は一人でギーコットンギーコットン機を織っています。しめたとあのまじゃくは扉を叩きます。
瓜子姫が「はい、どなたですか」ときくと
「瓜子ひめというのは貴女ですか。あなたの織る布はたいへんキレイだときいてきました。ぜひ見せてほしいんです」
どうにも不自然な作り声だったので、瓜子姫は「あやしい」と思い、
「すみません。おじいさんに留守中は誰が来てもけして開けるなと言われてます」
「そんなつれないことを言わないで、せめてほんの少し開けてくださいよ。開けてくれるまで帰りませんよ」
あんまりしつこいので細めに扉を開けて
「すみません、どうしてもいけないんです」と言いかけたところ、
扉のスキマからヌッと真っ赤でトゲだらけのごつい手がさしこまれます。
「あんた、あまのじゃくやろ!」
「ふふん、ほんならどうするちゅんじゃ」
あまのじゃくは扉の隙間からグイグイ体を押し込んできます。瓜子姫は必死で扉をしめようとしますが、ついにバキィと押し破られてしまいました。
「ふん、噂ほどでもない。どこが可愛いんじゃ。ヒドイ顔」と瓜子姫の顔をパンパンとひっぱたきます。
とうとう瓜子姫は気を失ってしまいます。あまのじゃくは瓜子姫の着物を脱がし、裏山の木に瓜子姫をくくりつけ、自分がその着物を着て瓜子姫にばけます。そしておじいさんたちが戻るのを待ちました。
おじいさんたちが戻ると何食わぬ顔であまのじゃくは瓜子姫の真似をします。
「瓜子や、寂しかったろう」
「うん、とっても寂しかった」
「そうか、モチを買ってきたから食べよう」
すると、どこからか声がします。
「瓜子姫は裏の山。着物着てるはあまのじゃく」
おじいさんおばあさんは「はて?」と不思議がりますが、まあ気のせいだろうと思っていると
「瓜子姫は裏の山。家にいるのはあまのじゃく」
また声がします。外に出ると、カラスが家の上を飛び回りながら、
「瓜子姫は裏の山。家にいるのはあまのじゃく」
と言ってるのです。それは瓜子姫が可愛がっていたカラスでした。おじいさんはもしやと思って裏山に行ってみますと、瓜子姫が柿の木に縛りつけられていました。
おじいさんは瓜子姫に化けたあまのじゃくをひっつかまえて、さんざんおしおきした後追い出しました。