むかしむかし、あるところに、病気の母親と親孝行の息子がいました。
ある日、息子が山で働いていると、やぶの中から、しらがの鬼ババが出てきました。
そして、息子のお弁当をのぞいていいました。
「病気の母親にも、そんなにそまつな飯を食わせているのか?」
「母親には、ちゃんと白いご飯を食べさせているよ」
息子が答えると、鬼ババは、
「そうか、そうか。ではあと十日したら、お前の家に行くから、白いご飯をたいておけ」
と、言って、やぶの中に消えてしまいました。
十日たって、息子が白いご飯をたいて待っていると、外からドスンときれいな箱が落ちてきました。
箱をあけてみると、中にはきれいな娘が入っていて、
「山の鬼ババに、ここの嫁になれと言われました」
と、言うのです。
息子はよろこんで、娘をお嫁さんにしました。
お嫁さんは、となり村の長者(ちょうじゃ)の娘でした。
話しを聞いた長者も、親孝行で心のやさしい息子が好きになって、たくさんのお金をわたしてやりました。
それで三人は、しあわせにくらしました。
あの鬼ババは、本当は山の神さまだったのです。