むかしむかし、あるところに、腕のいい鉄砲打ちがいました。
あるとき、鉄砲打ちが山へ出かけるしたくをして、家を出ようとすると、うっかり手が滑ってしまい、大切な鉄砲を石の上に落としてしまいました。
「ああ! 鉄砲の先が曲がってしまった。・・・でもまあ、鉄砲の先が曲がっても、何か取れるだろう」
と、そのまま曲がった鉄砲を持って、猟に出かけました。
鉄砲打ちが出かけた山には大きな池があり、その池にはカモがいて、あちこちで羽を休めています。
「ひい、ふう、みい・・・」
数えていくと、全部で十六羽います。
「まあ、これだけいれば、曲がった鉄砲でも一羽ぐらいは取れるだろう」
そう思って、鉄砲打ちは一発撃ちました。
ズドーン!
すると、その鉄砲の玉はジグザグに飛んでいって、何と全部のカモに当たったあげく、岩に跳ね返って、やぶへ飛び込んでいきました。
「こりゃあ、大漁だ! 曲がった鉄砲のおかげで、大もうけができたわい」
鉄砲打ちは、ジャブジャブと池に入ると、十六羽のカモを残らずつかまえて、岸にあがりました。
すると、ふんどしのあたりが、いやにムズムズします。
「なんだ?」
ふんどしをみると、大きなウナギとナマズが三匹ずつ、中であばれていました。
ついでに、わらぐつの中もムズムズするので脱いでみると、中からカニやドジョウが出てきました。
「何とも、こんな事もあるもんだな。さあ、もう帰るか」
鉄砲打ちが引き上げようとすると、やぶの中で、何かが暴れています。
「何だ?」
見てみると、岩に跳ね返った鉄砲の玉が命中したクマが、苦し紛れに土を引っかいていました。
クマが引っかいて出来た穴には、おいしそうな山イモがのぞいています。
「ほう。ついでに、これも取っていこう」
こうして鉄砲打ちは、山イモと、クマと、カニとドジョウと、ナマズとウナギと、十六羽のカモを背負って、山をおりていきました。