むかしむかし、だいだらぼっちという、山よりも大きな大男がいました。
「小さい、小さい。どんな山でもおれより小さいな。この世には、おれよりも大きなものはいないのだ」
と、いつもいばっていましたが、ある日の事、だいだらぼっちは自分よりも大きな、富士山という山を見つけたのです。
「むむむっ、おれよりも大きいとはなまいきな。ええい! 海のまん中へ持って行って、しずめてやるわ!」
だいだらぼちは、まわりにあったフジツルをかきあつめると、それをたばねてなわにして富士山にグルグルとまきつけ、海まで引っ張っていこうとしました。
しかし、さすがは日本一の富士山です。
だいだらぼっちがいくら引っ張っても、ビクともしません。
「えい、なまいきな山め!」
だいだらぼっはフジツルのなわを体にまきつけると、「えい!」と、力まかせに引っぱりました。
すると、
ブチッ!!
あまりの力に、フジツルのなわがきれてしまいました。
「これはいかん。今度ももっと丈夫なやつを」
だいだらぼっちは、もっと太いなわを作ろうとフジツルを探しましたが、もうどこにもありません。
「ぐおおおっ、なんだ今日は、はらの立つことばかりだ! フジツルめ、もうここには生えるな!」
だいだらぼっちは大きな足で地面をうちぬいて大きな穴を開けると、そのままどこかへいってしまいました。
それからそのふきん(相模野一帯)では、フジツルは生えないといいます。
そしてだいだらぼっちが足で開けた穴は沼となってのこり、鹿沼(かぬま)、しょうぶ沼が、それだといわれているのです。