牛方が、牛に荷物を載せて山道を通っていました。そこへ、山姥が現れました。
「荷物の鯖を一匹くれえ。くれないとお前を食ってしまうぞ。」牛方は、鯖を一匹投げると、牛を急がせました。山姥は、鯖をばりばりと食うと、すぐ追い付いて来ました。
「鯖をもう一匹くれえ。」牛方は、また鯖を一匹投げると、道を一生懸命急ぎました。
でも、牛はのんびり。鯖を食べた山姥は、忽ち追い付いてきました。こうして、荷物の鯖は全部山姥に食べられてしまいました。それでも山姥は言うのです。「牛を食わせろ。食わせないとお前を食ってしまうぞ。」牛方は、食べられては叶わないと牛を置いたまま逃げ出しました。
山姥は、牛をめりめりと食べるとやはり牛方を追いかけて来ました。牛方は、大きな池まで来ると、傍の木に登りました。追い付いた山姥は、池に映った牛方を見て、本物だと思って、いきなり池に飛び込みました。その隙に、牛方は木を降りて走り、一軒の家に飛び込みました。
でも、その家は山姥の家だったのです。牛方は、天井裏に隠れました。やがて山姥は戻って来ると、囲炉裏で餅を焼き始めました。餅が焼け始めた時、山姥はこっくりこっくりと居眠りを始めました。牛方は長い蚊帳の棒で、餅を突き刺して、食べてしまいました。
山姥が目を醒ますと、餅がありません。「誰だあ。俺の餅を食ったのは。」山姥が怒鳴るので、牛方は、「山の神、山の神。」と小さい声で言いました。「それじゃあしかたがないな。」
そういうと、山姥は甘酒を出してきました。そして、甘酒が温まる間に、またこっくりこっくり。牛方は蚊帳の棒で甘酒をすっかり飲み干しました。「誰だあ、甘酒を飲んだやつは。」山姥が叫ぶので、牛方はまた「山の神、山の神」と囁きました。「もう寝よう。石の箱がいいかなあ、それとも木の箱かな。」山姥が言うので、牛方は、「木の箱、木の箱。」と言いました。
山姥が木の箱に入って寝ると、天井から降りて、お湯をいっぱい沸かしました。
そして、木の箱に小さい孔を空けると、そこから熱いお湯をいっぱい注いで、山姥を退治したということです。
生词
山姥(やまんば) 山妖
鯖(さば) 鲐鱼,青花鱼
投げる(なげる) 投,掷,扔
ばりばり (用牙嚼硬东西的声音)嘎巴,咔咋
追い付く(おいつく) 追上,追赶
のんびり 悠闲,不慌不忙
めりめり 嘎吱嘎吱
映る(うつる) 映照
やつ 家伙(鄙视人的说法、骂人话)
いきなり 突然,冷不防
天井(てんじょう) 天棚,天花板
囲炉裏(いろり) 地炉,地炕
こっくり (打盹儿时)点头
居眠り(いねむり) 打盹
甘酒(あまざけ) 甜米酒
すっかり 完全,全部
注ぐ(そそぐ) 灌入
语法注释
1.「鯖をもう一匹くれえ。」/“给我一条青花鱼。”
“え”前接“え”段音后,形成“え”段长音,尤其是接命令形时,加强语气。
△ もう少しきれいにかけえ/再写工整点!
△ 外に出て行けえ/滚出去!
2.「誰だあ。俺の餅を食ったのは。」/“谁吃了我的烤年糕?”
“あ”前接“あ”段音后,形成长音,多用于感叹词,加强语气,语气缓和。
△ なあ、ちゃんと覚えておいで/呐,要记好了。
△ まあ、きれいですもの/啊,好漂亮呀。
3.その家は山姥の家だったのです/那个家是山妖的家。
格助词“の”后续“だ”“です”,表示加强断定或申述理由、根据、立场等语气。口语中用“ん”。
△ その日が雨が降っていたのです/那天下雨了。
△ 彼は病気なのです/他是有病。