むかしむかし、吉四六さんと言う、とてもゆかいな人がいました。
吉四六さんの村にはカラスがたくさんいて、畑は荒らされるし、朝から晩までカァー、カァーとうるさいし、まったく困ったやっかい者です。
「よし、わしがカラスを捕まえてやろう」
吉四六さんがワナをしかけると、二十羽あまりのカラスがとれました。
「さて、このカラスをどうしようか?」
カラスは他の鳥と違って、食べてもおいしくありません。
かといって、このまま捨ててしまうのも、もったい話です。
「そうだ。町へ持って行って、カラスを売ってこよう」
吉四六さんはカゴにカラスを入れると、何を考えたのかカゴのふたの上にキジを一羽乗せて出かけました。
「ええー、カラスはいらんかな。カラスの大安売りだよ。一羽がたったの十文(→三百円ほど)。カラスはいらんかな」
吉四六さんの売り声に、町の人たちは驚きました。
「おい、見ろよ。カラス、カラスと言っているが、カゴにつけているのはキジではないか」
「なるほど、キジに間違いない。あの男、よほど田舎者とみえる。きっとカラスとキジの区別がつかんのだ。キジが一羽たったの十文なら、安い買い物だ。おーい、一羽くれ」
「わしにも、そのキジ・・・、いや、カラスをくれ」
「わしにもだ」
町の人たちが寄って来ると、吉四六さんはみんなから十文ずつもらって、カゴに入ったカラスを渡しました。
「何だこれは? カラスではないか?」
「そうだ、なぜキジをくれない!」
町の人たちは文句を言いましたが、吉四六さんはにっこり笑って言いました。
「わしはちゃんと『カラスはいらんかな』と、言ったではないか。そうだろう?」
「そっ、それは確かに・・・」
こうして吉四六さんは、売り物にならないカラスで大金をかせいだのです。