むかしむかし、サルとカニが餅を作る事になりました。
「カニどん、おらが餅をついてやるから、カニどんは餅米を持って来てくれ」
カニは家から餅米を持って来ると、サルに渡しました。
「よしよし、ではカニどん。おらが餅をついてやるから、カニどんはこの餅米を蒸してくれ」
カニは言われた通りに、餅米を蒸しました。
「よしよし、ではカニどん。おらが餅をついてやるから、餅をつく為のうすときねを持って来てくれ」
カニはうすときねを持っていなかったので、山へ行くと自慢のハサミで木を切り倒し、木を削ってうすときねを作りました。
カニからうすときねを受け取ったサルは、やれやれと言う様に首を横に振って言いました。
「駄目駄目。うすは良いが、こんな曲がったきねじゃ、餅はつけんよ」
カニは仕方なくまた山へ行って、きねにぴったりの木を探しました。
さて、その間にサルは曲がったきねとうすで餅をつくと、その餅を持って柿の木に登ってしまいました。
やがてカニはまっすぐのきねを作って来ましたが、すでにサルは木の上でつきたての餅を食べようとしています。
「やあ、カニどん。
残念だけど、餅は全部頂くよ。
欲しかったら、ここまで来てみなよ。
まあ、カニの足ではここまで登れないだろうけどね。
ウッキキキー」
木の上から馬鹿にするサルに腹を立てたカニは、持っていたきねでサルが登った柿の木を思いっきり叩きました。
ドーーーン!
するとその振動でサルはバランスを崩して、食べようとしていた餅を落としてしまったのです。
「しまった!」
サルが慌てて木から降りると、餅はカニが自分の家に持って帰った後でした。
サルは、カニの家の戸を叩くと言いました。
「悪かった、カニどん。謝るから、おらにも餅を分けてくれよ」
「・・・・・・」
カニは餅をしっかりと掴んだまま、返事をしません。
「わかった。カニどんが前から欲しがっていた、毛を一本やろう。毛が生えていると、暖かいぞ」
「・・・・・・」
「じゃあ、毛を二本でどうだ?」
「・・・・・・」
「じゃあ、毛を三本だ!」
なんともせこい交渉ですが、意外にもカニは納得したらしく、サルから毛を三本もらうと餅を半分にして、片方をサルに分けてあげました。
その時からです。
サルの毛がむかしより三本少なくなって、代わりにカニの甲羅に毛が生えるようになったのは。