むかしむかし、あるところに、おじいさんとおばあさんが住んでいました。
おじいさんは毎日、山へしばかりに、おばあさんは毎日、川へ洗濯に行くのですが、ある日の事、おじいさんがおばあさんに言いました。
「なんじゃい、この薄汚れたふんどしは。もっとしっかり、洗濯をせんか!」
すると、かまどでご飯をたいていたおばあさんも、負けじと言いました。
「それを言うなら、なんですか、このしめったしばは? もっと乾いたしばを取ってこないと、ご飯がたけないじゃありませんか」
「なんだと! 文句を言うなら、ばあさんがしばを取ってくればいいんだ!」
「では、おじいさんが洗濯をしてください!」
そこで二人は、仕事を取替えっこする事にしたのです。
次の日、おじいさんは洗濯物を持って川に行きましたが、川の水はとても冷たくて洗濯どころではありません。
「ばあさんのやつ、こんなに冷たい水で洗濯をしていたのか。これでは手がかじかんで、うまく洗濯できんのは当たり前だ」
一方、山へしばかりに行ったおばあさんですが、しばはそう簡単には見つかりません。
たまに見つかっても、しめった小さな物ばかりです。
それに山道を歩いてきたので、もう足がくたくたでした。
「おじいさんは、こんな山道をいつも歩いていたんですね。それにあるのは、しめったしばばかり」
こうして、おじいさんはうまく洗濯が出来ず、おばあさんはうまくしばかりが出来ないまま、家に帰って行ったのです。
その帰り道、ばったり出会った二人は同時に言いました。
「ばあさん、すまない。洗濯ができなかった」
「おじいさん、すみません。しばかりができませんでした」
「・・・わはははははは」
「・・・うふふふふふふ」
それから二人は、大笑いです。
こうして次の日からは今まで通りに、おじいさんがしばかりに、おばあさんが洗濯に行く事になったのです。