自分のことが嫌いで、「俺はダメだなあ」とか「俺は、最低の人間なんだよ」が口ぐせの人は、①自尊心が低い人である。仕事がうまくいっても、自分の実力だとは思わず、「たまたま運がよかっただけ」と考える人もまた、自尊心が低いタイプであるといってよいだろう。
このように自尊心が低い人は、確固とした主義.主張を持たない。自分自身のことを信用していないので、自分なりの意見を強く持てないのである。そのため、他人の言うことをそのまま信じる傾向がある。
(中略)
アメリカ、マサチューセッツ大学のヴェンカテセン教授は、男性用スーツを3種類用意して、どれが一番良いものかをグループで話し合って選ばせるという実験をしている。この実験では、本物の参加者にまじって、(注1)サクラも参加しており、そのサクラが、「Аのスーツがいいよ」とか「Bのスーツが一番だよ」と参加者を説得するのである。そのサクラの説得をどれくらい受け入れるかが測定されたわけだ。
ヴェンカテセン教授は、実験に先立って、参加者の自尊心を調べる心理テストをやらせておいた。そして、自尊心の高低別に、サクラに説得されてしまうパーセンテージを調べたのである。
すると、自尊心が高いグループでは、40%しかサクラの意見を受け入れなかったのに、自尊心の低いグループでは、80%がサクラのいいなりになってしまうことがわかった。簡単にいうと、②自尊心が低い人を説得するのはやさしくて、自尊心が高い人を説得するのは難しいのだ。
では、自尊心が高い人を説得するときには、どうすればいいのだろうか。
自尊心が高いを説得するときは、③「注意発散法」を使うのがいいとされている。自尊心が高い人には、説得メッセージに集中させず、ほかのことに気をそらせるようにすると、その内容を受け入れやすいことがわかっているからだ。これは、カリフォ二ア州立大学のラマーズ教授の実験で確認されている。
ラマーズ教授の実験によると、自尊心が高い人には、相手が食事をとっているとか、別の仕事に気をとられているような状況を狙って説得してみると、成功しやすくなったのである。なぜ④自尊心の高い人が、注意をそらされると説得されてしまうのかについてはよくわからないが、おそらくは、内容をよく理解できないときにも、彼らは「わかったような(注2)素振り」をしたいと思うのではないだろうか。
(注1)サクラ:実験の内容を知っていて、参加者にわからないように実験に協力する人
(注2)素振り:ふり
「問」筆者によると、①「自尊心が低い人」にはどのような傾向があるか。
1 実力があるのに謙遜する
2 なんでも運のせいにする
3 他人を信用しない
4 他人に意見を疑わない
「問」下線②「自尊心が低い人を説得するのはやさしくて」とあるが、それはなぜか。
1 自尊心の低い人は確固とした主義.主張を持たないから
2 自尊心の低い人は同じ意見の人とグループをつくりやすいから
3 自尊心の低い人は他人からよく思われたいと思っているから
4 自尊心の低い人は自分なりの意見を強く持っているから
「問」下線③「「注意発散法」」とはどんな方法か。
1 次々にいろいろなものを見せて注意を発散させる方法
2 ぼんやりさせて注意を集中できないようにさせる方法
3 何人かの人が一度に話しかけて注意を発散させる方法
4 ほかのことに気をそらせて注意が集中できないようにさせる方法
「問」筆者の推測によると、④「自尊心の高い人が、注意をそらせると説得されてしまう」はなぜか。
1 自尊心が高い人は自分の意見が最高だと思っているから
2 自尊心が高い人はわからなくても理解したふりをしたがるものだから
3 自尊心が高い人は一度にいろいろなことに注意できないから
4 自尊心が高い人は簡単に注意をそらされたりしないから
「問」この文章によると、自尊心の高い女性にプロポーズして成功するにはどうしたらよいか。
1 その女性の能力やセンスをほめてプロポーズする
2 高価なプレゼントをしたあとでプロポーズする
3 その女性の好きなスポーツを観戦しながらプロポーズする
4 その女性のライバルが結婚したという話をしてプロポーズする