いつも思うが、お医者さんはこういう時患者の舌を出した顔を見てイラッと来ないのだろうか? もしオレが医者だったら、「はい、アッカンベーして、目をよく見せて。舌も出してね」「はい。ベー」「…………。なんだその顔はテメエっ!! 医者をナメてんじゃねーぞこの野郎!!! それが診察を受ける人間の態度か!!!」と激怒して近くにあるサジを投げつけそうである。まだあかんべーくらいなら我慢出来るかもしれないが、肛門科なんてパンツを脱いだ患者がこっちに向けて肛門を突き出してくるんだぜ? どんなに人間の出来た先生でも、これはやる気を無くすのではないか。いきなり尻を見せられても平然としていられる先生なんて、ぬけさく先生くらいである。
「よし、診察終了だ」
「ええっっ!!!!! 終わりですかっ!!!」
なんと、脈と目と舌を見ただけで全診察が終了である。東洋医学恐るべし。いや、東洋医学というか、この人が個人的に恐るべし。……ドクター、もしかして取締役と弁護士以外は手を抜くんじゃないでしょうね。
「そうじゃな。わしが見たところ、君は胃が悪くないか?」
「悪くないです」
「そうか。じゃあ、時々下痢になるんじゃないか?」
「なります」
「ひょっひょっひょ。やっぱりな。それでは、夜眠れないことが多いだろう? ちょっと不眠症の傾向があるようじゃ」
「全然ないです」
「あっそ。それでは、たまに、腰が痛くなったりするな?」
「はいたしかに腰痛には苦しんでいます!」
「ひょっひょっひょ。やっぱりな。ではそのあたりを踏まえて、おまえにぴったりの漢方薬を煎じてやろうじゃないか」
「はい、お願いしますスーパードクター」
……いやー、良くわかりますね先生。レントゲンも撮らないし聴診器もあてないし血も抜かないのに、脈と目と舌を見ただけで僕の体の不調を言い当てたり言い当てなかったりするなんて。
いやーまったく。
…………。
あの、これは診察というより占いじゃないですかね??
基本的にこの流れ、旅先でよく会うインチキ予言者の占いとものすごく共通点が感じられるんですが。ドクターが本当に神医で、仮に脈から病気がわかるとしても、だいぶ外れてますがな。まだくすぶっている肺炎に関しては何も言われなかったしな……。胃痛とか腹痛とか腰痛とか不眠症とかたいがいの人に当てはまりそうな症状をとりあえず言ってみるってところが、完全に占いの手口のような気がしますが。