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香格里拉篇 06
日期:2016-12-16 19:45  点击:348
 「すみませんけどねおばさん、僕は納得出来ませんね。このチョコレートクッキーは誰が陳列したんですか? 僕ですか?? 違うでしょう。あなたがたじゃないですか。スーパーマーケットに陳列されているクリスプチョコレートを手に取ってレジに持って来た、それは客として当然の行為でしょう。仮にこれが店員さんが個人的に自宅から持ってきた、プライベートで購入したおやつだというのなら買えないのは納得します。あなたには引き渡しを拒否する権利がある。でもそうじゃない。僕は何一つルール違反は犯していない。無理に値切ったりしているわけでもない。ただスーパーマーケットの棚にあった商品を定価で購入しようとしているだけじゃないですか。どうしてその純粋な行為を否定されなくてはいけないんですか」
 
 「とにかくダメと言ったらダメなの! 明日には買えるかもしれないから、また明日来なさい! 来明天!」
 
 「イヤだっ!!! オレは今買いたいんだ!!!」
 
  オレが強気に出るとおばさんはさも面倒くさそうな表情になったが、口頭で状況を説明したところで言葉の壁のせいでオレが理解出来ないとわかっているため、彼女は小さな紙を取り出して何やら漢字を書き出した。イマイチ読めないが、どうやら「『銭』に関するなにかが今は無い。だから買えない」というようなことが書かれているようだ。定価がいくらだという情報が無い、つまり値段がわからないから売れない、ということなのだろうか?
 
「おばさん違うんだ。オレはね、『なんで買えないか』とか、そういうことを聞いてるんじゃないんだよ。別に理由なんかどうだっていいんだよ。それは重要なことじゃない。そうじゃなくて、どんな訳があろうと、スーパーマーケットで陳列されているチョコレートを買えないのは納得出来ないと言ってるんだよ。そうでしょう? 僕が間違ったことを言っていますか? もし間違っているんなら教えてくださいよ。でも、誰が聞いたって僕の言い分は正しいでしょう? とにかく、売りなさいよ。金は払うんだから。ほら、見てオレの財布の中。ちゃんと十分な金額が入ってるでしょ?」
 
 「しつこいなああんたっ!! いい加減にしておくれ!!」
 
 「それはこっちのセリフなんだよっ!!! そっちこそいい加減にしてくれよ!!!」
 
  まったく……、なんて物わかりの悪い店員なんだ。自分の非を一切認めないつもりか??
 
 オレだって、こんなところでゴネて無駄に時間を費やしたくないよ! 早く帰りたいんだ。ただ、まだこれがな、ごく普通のクッキーだとか、チョコレートコーティングだけでナッツのふりかかっていない、凹凸のないチョコレートクッキーだったらオレも引き下がってもいいよ。でもな、これはクリスプチョコレートなんだよ!! チョコレートコーティングの上にナッツが散りばめられているんだっ!! 写真だけ見ても激しく食欲をそそられるだろうがっっ!!! チョコレートの甘い口溶けとナッツの歯ごたえが抜群の相性を見せる、こんなに洗練されたおやつとして相応しいお菓子を買う気まんまんでレジまで持って来て、もう脳の中では自分が食べているシーンも想像して甘い脳内になっているのに今さら置いて帰るなんてそんなことが出切るかっっっ!!!! お菓子好きをナメんじゃねーぞテメエっっ!!!! チョコレートクッキーのひとつも満足に売れないくせに、なにがシャングリラだっっ!!!!
 
  レジおばさんは、「なんなのよこの駄々をこねる大人はっ。『一汁一菜、争いをせず全てのことを許す生活を送るのです』なんて言ってたくせにたかがクッキー1箱にこれだけ固執するってバカじゃないのっ」という軽蔑の表情でオレを見ている。
 
 ああそうだよ。全てのことを許すよ。でもなあ、ひとつだけ教えておいてやるよ。「全てのことを許す」というその「全てのこと」の中に、クリスプチョコレートは入ってないんだよっっ!!!! オレが許すのは、クリスプチョコレート以外の全てのことだっっ!!!!

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12/01 09:42