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和尚の失敗
日期:2016-12-17 08:44  点击:362
 むかしむかし、あるお寺に、和尚(おしょう)さんと二人の小僧がいました。
 ある冬の晩の事。
 和尚さんが『でんがくどうふ(とうふを長方形に切って串に刺し、味噌を塗って火にあぶった料理)』を二十串、いろりにグルリと並べて刺しました。
「おおっ、良い香りじゃ。さあ、焼けてきたぞ」
 とうふに塗りつけた味噌がこんがりと焼けて、たまらなくいい匂いです。
 するとそこへ、匂いをかぎつけた二人の小僧がやって来ました。
 和尚さんは、『でんがくどうふ』を一人で全部食べるつもりでしたが、二人の小僧にしっかりと見られてしまったからに、今さら隠すわけにはいきません。
 そこで和尚さんは、こう言いました。
「ちょうど、良いところに来たな。
 お前たちにも分けてやるが、ただ分けてやったのではつまらん。
 そこで串の数をよみ込んだ歌を作り合って、その数だけ食べる事にしよう。
 では、わしから始めるぞ。
 『小僧二人、にくし(二串)』」
 和尚さんはニヤリと笑うと、『でんがくどうふ』をふた串取って食べました。
 歌の意味は、『小僧が来なかったら一人で全部食べられたのに、二人の小僧が憎い』という意味です。
「お前たちには、こんな歌はよめまい」
 ところが、年下の小僧が、
「それはどうでしょう。『おしゃかさまの前の、やくし(八串)さま』」
と、見事な歌をうたって、『でんがくどうふ』を八串もせしめたのです。
 歌の意味は、病気を治す神さまの薬師如来(やくしにょらい)のやくしと、八串をひっかけたのです。
「何と、なかなかやりおるわ」
 あてがはずれた和尚さんは、しぶい顔をしました。
 でも、まだ十串も残っています。
 まさか、これを全部取られる事はあるまいと、和尚さんは安心して年上の小僧に歌をよませました。
 すると年上の小僧は、
「『小僧よければ、和尚とくし(十串)』で、十串いただきます」
と、残りの十串を全部取ってしまったのです。
 ちなみに歌の意味は、『出来の良い小僧がいれば、和尚さんは得をする』というものです。
 こうしてほとんどの『でんがくどうふ』を取られた和尚さんは、もう二度と歌よみ勝負をしなかったそうです。

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