むかしむかし、スズメとカラスが林に行って、楢(なら)の木に一夜の宿を頼みました。
すると楢の木は、
「ふん。お前たちみたいなやつに、宿なんか貸せんわ」
と、断ったのです。
するとそこへ神さまがやって来て、楢の木に言いました。
「これこれ。へる物でもないし、一宿ぐらい貸してやれ」
しかし楢の木は、首をふって言いました。
「いいえ、いくら神さまに言われても、こればっかりはゆずれません。
わしは木の中でも、位の高い楢の木です。
他の木とは、格が違います。
ツルやタカと言った格の高い鳥ならまだしも、スズメやカラスごときには宿は貸せません」
「そこを曲げて、今回だけでも」
「いいえ。曲げられません」
「どうしてもか?」
「はい、どうしてもです」
この楢の木の態度には、さすがの神さまも腹を立てました。
「それなら、仕方がない。今日以降、お前たちは、冬は葉のないようにしてくれる。それでも、いいのか?」
「はい、お好きなように」
「よし、わかった! ???では、お前たち、わしが他を当たってやるから、一緒に来るがいい」
神さまはそう言うとスズメとカラスを連れて、今度は杉や松や檜(ひのき)のところへ行きました。
「実はな、これこれこういう訳で、スズメとカラスが困っておるのだ。どうだ、一晩の宿を貸してもらえないだろうか?」
すると、杉も松も檜もこころよく言いました。
「はい。それでは、どうぞ私たちを宿にお使い下さい」
これを聞いた神さまは、とても喜びました。
「おお、そうかそうか、お前たちは、実に良い心がけをしておる。この褒美に、お前たちはどんな時でも葉があるようにしてやるかなら」
こんな理由で、今でも楢の木は冬になると葉がなくなり、杉や松や檜たちは冬でも葉が青々としているのです。