8、
わが庵(いほ)は 都のたつみ しかぞすむ 世をうぢ山と 人はいふなり
喜撰法師
【歌意】 私の草庵は都の東南にあり、こんなに心静かに暮らしている。それなのに人々は、ここを世を憂えて逃れ住む宇治山だと言っている。
【作者】 (きせんほうし) 9世紀後半の宇治山の僧。六歌仙の一人。
【説明】 「たつみ」は東南の方角。「しか」は、このように、の意。「うぢ」は「憂し」と「宇治」の掛詞。人々は宇治山というと「憂し」と掛けて、自分が世間を憂しと思ってここに隠棲していると思っているが、そうではないといっている。