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ちはやぶる 神代(かみよ)も聞かず竜田川(たつたがわ) からくれなゐに 水くくるとは
在原業平朝臣
【歌意】 不思議なことが多かったという神代にも聞いたことがない。一面に紅葉が浮いて流れる竜田川が、真紅に水をくくり染めにしているなどとは。
【作者】 (ありわらのなりひらあそん) 平城天皇の皇子阿保親王の第五子。在原氏を賜る。在五中将ともよばれ、『伊勢物語』の主人公にも擬せられる。六歌仙の一人。
【説明】 「ちはやぶる」は「神代」にかかる枕詞。二条后(清和天皇の后)が東宮の御息所とよばれていたころ、御屏風に竜田川に紅葉が流れている絵が描かれていたのを題にして詠んだ歌(屏風歌)。屏風歌の流行が、古今集時代の歌風を風雅ならしめた原因とされる。