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花さそふ 嵐の庭の雪ならで ふりゆくものは わが身なりけり
入道前太政大臣
【歌意】 桜の花を誘うように嵐が吹き散らす庭の、雪のように降る花びらではないが、ほんとうに旧(ふる)くなっていくのは、私自身だな。
【作者】 (にゅうどうさきのだいじょうだいじん) 1171~1244年。藤原公経(ふじわらのきんつね)。定家の義弟。承久の乱の時、鎌倉方に内通し、その後は栄進が著しかった。
【説明】 「ふりゆく」は「降りゆく」と「旧りゆく」の掛詞。自らの老いを実感し、散りゆく桜の花を見ながら嘆いている。