冬といえば、今でもすぐ幼い時毎朝のように見たバケツや甕の中の、氷片の浮かんだ青黒い水を思い出す。あそこには本当の冬があったと思う。今でも、郷里に帰ると、幼いころと同じように、バケツに氷も張れば、甕にも氷が張る。そして、幼いころと同じように、氷片を浮かべた水を見ることができる。しかし、幼いころ感じた厳しいものを、そこから受け取ることはできない。幼い者がバケツや甕の中を覗いていたものは、冬の心であったのである。或いは冬の顔といったほうがいいかもしれない。大人になると、もう冬の心も、冬の顔も見えなくなる。見る感受性を失ってしまうのである。
1、「幼いころ感じた厳しいもの」とあるが、どんなものか。
①氷片を浮かべた青黒い水
②冬の厳しい寒さ
③冬の心、冬の顔
④見る感受性