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日期:2017-08-04 19:59  点击:563
 2007年から「団塊老人」と呼ばれる人たちが街にあふれ出す。働きたくても職がなく、手持ちぶさたな毎日を送る熟年の人波が、日本中で「漂流」を始める。
 戦後のベビーブーム(1947-1949年)に生まれた団塊の世代はざっと700万人。最近の出生数の倍以上だ。この巨大なサラリーマンの塊が定年となり、第一線から退くのが2007年から。同時に、日本の人口も減り始め、十年後には四人に一人が65歳以上となり、20代は300万人も減る。人口が減るなかで高齢者が増え続けるという、今までどの国も( 1 )状況が現実のものとなる。一組の夫婦で4人の老人を介護しなければならず、地域レベルでの福祉サービスを整備することが、急務となっており、コミュニティー介護サービスの充実を訴える識者も多い。
 最も影響が出るのは社会保障と労働力不足だろう。団塊の世代が年金の支払い側から受給者に回ると、現役世代の負担が一気に過重になる。現状のままでは、年金も介護保険も立ちゆかなくなる。下の世代からは「団塊の世代・亡国論」も聞こえる。年金を食いつぶして国を滅ぼすと。モノづくりの現場では、技術や技能が次世代に引き継げるかが深刻な問題になり、日本経済が大きく地盤沈下するとの予測もある。(中略)
 しかし、事態を悲観的にばかり考えても仕方がない。少子高齢化社会という、未知の航海へ出るのだ。楽観的な希望を見いだす作業も必要だろう。よく考えてみよう。高齢社会は、ほんとうにそんなに暗いのだろうか。企業などに40年も勤めれば、いろんな知識や能力が身につく。そんな経験豊かな人々が、地域に帰ってくるのだ。団塊の世代の力を借りて、成熟社会をつくるチャンスではないか。( 2 )団塊の世代は、社会にメッセージを発信し続けてきた人たちだ。十代からビートルズ世代として若者文化の担い手となり、受験戦争を経て入った大学では権威や体制に激しく反抗した。東大入試を中止に追いやったのも彼らである。
 社会に出ると企業戦士に変身し、核家族をつくり、ニューファミリーと呼ばれた。バブル経済に浮かれ、その崩壊でリストラも経験した。功罪はともかく、紛れもなく戦後60年の主役であり続けた世代である。この国が少子高齢化社会を乗り切れるかどうかも、( 3 )。
 ここに、東京都が昨年まとめた団塊の世代の意識調査報告書がある。一万世帯を対象にした大規模調査で、興味深い「団塊の世代」像がみえてくる。現代サラリーマンは多くが健康不安を抱えていると言われる。しかし調査では、団塊の世代のなんと九割が「健康に自信あり」と答え、定年後も働く意欲を持つ人が八割を超えた。一方で、会社人間と言われながら「没頭できる趣味」や「仕事以外の人的ネットワーク」を持つ人がそれぞれ四割もいる。実際は仕事だけの人間ではないのだ。十人に四人はボランティアやNPO活動にも関心を持っている。こうした団塊の世代の中には、有能で定年後も再雇用される人も多いだろう。働ける人は大いに働き、現役の負担を助けるべきである。同様に期待したのが、一生活者として地域に帰ってからの活動だ。近年、定年後にNPO法人を作ったり、高齢者の世話などのボランティア活動の流れを、ぐっと加速させるだろう。
 趣味でもいい。インターネットで仲間を募り、同世代の一万人に一人でも応じたら、いっぺんに数百人が集まるのは大変な力だ。団塊の世代が働けば、状況が変わる。定年でさっさと引退するのではなく、さっそうとした「生涯現役」のお手本をみせてほしい。そうすれば、縮み志向の近未来に光が差してくる。暗雲を吹き飛ばす「団塊旋風」を巻き起こしてほしい。
(西日本新聞 2005.01.03社説より)
 
1、( 1 )に入るものとして、最も適当なのはどれか。
①一度は経験してきた。
②経験したことがない。
③いつか経験することになる。
④経験せざるを得ない。
 
2、「一万世帯を対象にした大規模調査で、興味深い「団塊の世代」像がみえてくる。」とあるが、調査結果からわかるのはどのような「団塊の世代」像か。
①これまで企業戦士として生きてきて、仕事以外に生きがいのない人が多い。
②色々な知識や能力を身につけた世代だが、健康に不安を持っている人が多い。
③健康であり、退職後も働く続けたいと思っている人がほとんどである。
④退職後は地域でボランティア活動に参加しようと考えている人たちが多い。
 
3、( 2 )に入るものとして、最も適当なのはどれか。
①ところで
②ただし
③しかも
④だからこそ
 
4、「団塊の世代の力を借りて、成熟社会をつくるチャンスではないか。」とあるが、筆者が成熟社会を作るために団塊の世代に期待していることは何か。
①長い間蓄積してきた技術や技能を次の世代に伝えること。
②退職後も大いに働き、現役世代にできるだけ負担をかけないようにすること。
③NPO法人を作ったり、ボランティア活動を通して地域を活性化させること。
④「団塊旋風」も巻き起こし、高齢社会の暗雲を吹き飛ばすこと。
 
5、( 3 )に入るものとして、最も適当なのはどれか。
①一緒に考えてみようではないか。
②彼らの動向に大きくかかっている。
③この国の抱える諸問題の一つである。
④誰にも分っていないのである。
 
6、「縮み志向の近未来」の説明として正しいのはどれか。
①少子高齢化社会の到来を悲観的にばかり考えること。
②2007年から「団塊老人」が日本中で「漂流」を始めること。
③年金も介護保険も立ちゆかなくなるのではないかという不安。
④高齢者が増え続けるために、社会が活力を失うこと。
 
7、この文章にタイトルをつけるとしたら、以下のどれがいいか。
①団塊世代よ、「生涯現役」の先頭に
②少子高齢化と社会保障
③この国は少子高齢化社会を乗り切れるか
④団塊の世代の意識調査報告
 

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