(А)子供が健やかに生まれてくることを望むのは自然な感情であり、出生前診断によって胎児の状況を知ることができれば、親としてよけないな不安から解放される。確かに、胎児に先天異常があるとわかった場合、生むか生まないか悩むことだろう。私の場合、たとえ子供に先天異常があろうと生みたい思うが、やむを得ず中絶する母親もいることだろう。だがそれは現在の社会が障害者を抱えた家族にとって生きにくい社会だからであり、母親を責めるのは間違いである。この解決には、障害児であっても安心して産み育てられる社会をつくることが重要なのであり、母親や出生前診断に問題があるのではない。それよりも、出生前診断によって胎児が正常であるとわかれば、妊婦は不必要な出産の不安から解放されるし、仮に先天異常があるとわかれば、産むかどうかの判断や、また子育てへの心構えもできる、これらのことを考えるとプラス面の方が大きいと思う。
(B)私は胎児の出生前診断に反対である。なぜなら、出生前診断は先天異常を持っている胎児の中絶を前提に行われているし、そこで奪われるのは、結局、障害を持った胎児の命だからだ。
私も「産む・産まないは女性の権利」という考え方は理解するが、女性たちの心のどこかに「生まれてくると、かえって本人(障害児)が不幸だ」「障害児が産まれると親の負担になる」という考えがあるとしたら、そのような障害者の生きる権利を否定するような考え方を認めるわけにはいかない。
この社会では、先天異常の胎児の中絶を求めるのは、母親よりも父親である可能性の方が高いだろうが、いずれにせよ、出生前診断によって胎児の段階から障碍児の発生を予防しようとする社会は、生まれてからの人間を差別選別する社会である。
1、Bの考えを正しく述べているのはどれか。
①子供を産むか産まないかは、女性が決めることだ。
②いかなる人口中絶も認めるべきでhない。
③出生前診断は障害児の生きる権利を否定するものである。
④社会としては先天異常児の出産を防ぐ必要がある。
2、АとBは同じテーマについて論じ合っているが、それは何か。
①人口中絶の是非
②出生前診断の是非
③障碍児の生きる権利
④胎児は「もの」か
3、Аは、障害のある胎児を中絶する母親に対して、どう考えているか。
①生まれてくる子供の将来を考えれば、当然だと考えている。
②母親を責めるつもりはないが、できれば産んでほしかったと考えている。
③胎児の命を奪うことは、いかなる場合でも許されないと考えている。
④望ましいことではないが、しかたがない状況があると考えている。