自然海岸や干潟などは、数十年前に比べると半分ほどしか残されておらず、湖沼、河川、水路などの水辺の多くがコンクリートで固められ、その末に、そこに棲んでいた生き物が絶滅するなどの事例が急増している。
こうした生物多様性の危機は文化の危機であり、また、石器時代以来、アジアの多様な地域から渡来した人々が、日本列島の自然の恵みを享受しつつ、自然の厳しさと折り合いながら生きることで確立された、日本人としてのアイデンティティーの拠り所を失うという危機でもある。
いっそう重大な問題は、このまま自然喪失の傾向が続くとすれば、生態系の機能を通じて提供されてきた多様なサービスも含めた( )が提供されなくなり、生活や生産に支障が生じることである。そのサービスには、浄化機能、利水機能、生物の生息・生育場所の提供など様々なものがあるが、今日、これらサービス機能の急激な低下が進んでいる。中でも湿地を含む淡水生態系は、森林生態系や海洋生態系よりも危機に瀕しており、その保全と再生は最重要課題の一つである。
(鷲谷いづみ「自然再生—―持続可能な生態系のために」より)
1、「日本人としてのアイデンティティーの拠り所」とあるが、具体的にはどのような内容を述べているか。
①日本人が、戦後、経済発展を優先して、破壊してきた日本列島の自然のこと。
②自然が提供する浄化機能、利水機能、生物の生息場所などのサービスのこと。
③しだいに失われつつある日本人の自然と共生する伝統や生活様式のこと。
④日本人の伝統や精神を育んできてくれた豊かな日本列島の自然のこと。
2、( )に入るものとして、最も適当なのはどれか。
①生物多様性
②自然の再生
③自然の恵み
④生態系の役割
3、筆者がこの文章で一番訴えたかったことはなにか。
①湿地を含む淡水生態系の保全
②日本人としてのアイデンティティー
③生物多様性の危機は文化の危機
④森林生態系や海洋生態系の保全