元禄の昔、芭蕉は出羽の旅で〈閑(しずか)さや岩にしみ入る蝉(せみ)の声〉と吟じた。では実際に耳にしたのは何ゼミか。威勢よく「ジリジリ」と鳴くアブラゼミだと主張したのは歌人斎藤茂吉。独文学者小宮豊隆は「チーー」と細い声のニイニイゼミ説を唱えた。
在昔日元禄年间,芭蕉在出羽旅行期间曾吟过这样一首诗:“悠然之间,蝉鸣在岩石间回荡。”那么,实际听到的声音又是哪类蝉发出的呢?俳歌诗人斋藤茂吉认为这是威风凛凛的秋蝉发生的“叽哩叽哩”声。而德国文学家小宫丰隆则主张是声音纤细的知了发出的“嘁嘁”声。
芭蕉に遅れること二百数十年、茂吉は同じ季節に同じ寺を訪ねた。別の折には現地で捕れたセミの標本も調べた。粘りに粘るが、最後は「私の結論には道程に落ち度があった」と降参した。
在芭蕉去后220多年,茂吉在同一个季节参观了同一家寺庙。正好有个机会,他有幸查看了在当地捕获的蝉虫标本。虽然他付出了很大的努力,但最后不得不放弃,“结论是我的路线与芭蕉是不一致的。”
「時期や標高からするとアブラゼミ説よりニイニイゼミ説に理があります」と昆虫学者の林正美・埼玉大名誉教授。ましてヒグラシの「カナカナカナ」やエゾハルゼミの「ミョーキン、ケケケ」では岩にしみ入る感じがしないと話す。
昆虫学家、埼玉大学名誉教授林正美说,“从时间和海拔来看,相比秋蝉说,知了的说法更有说服力。”并且他还说,夜蝉发出的“咔叽咔叽”声和虾夷蝉发出的“咻噤…呵呵呵”是无法给人声音穿透石头的感觉。
林さんによると日本に生息するセミは推定35種。近年、本州都市圏で生息域を広げるのは「シャワ、シャワ」と合唱するクマゼミだ。「ほかのセミと違って踏み固められた公園の土中でも育つ。ヒートアイランド現象にも耐えられる」。
根据林先生说,现在在日本繁衍的蝉推测有35种。近年来,喜欢“Shawa、Shawa”一起合唱的蚱蝉在本州岛都市圈的栖息地不断扩大。“与其他种类的蝉不同,即便是公园里被游人踩实的泥土,蚱蝉也能生息,它甚至还能忍受城市热岛效应。”
逆に減る兆しがあるのはニイニイゼミやツクツクボウシだ。成長に欠かせない軟らかくて湿った土壌が細ったためらしい。ヒグラシも都会ではめっきり聞かなくなった。
但蟪蛄与寒蝉的情况却截然相反,有减少的趋势。据说是它们成长过程中不可或缺的湿软土地变少的缘故。夜蝉的鸣叫声也绝少在都市可以听到。
〈やがて死ぬけしきは見えず蝉の声〉芭蕉。生き急ぐかのごとく一心不乱に鳴くセミの声に、人は生命のはかなさを思う。環境激変の世、俳聖が聞いたとおぼしきニイニイゼミとて運命は予測しがたい。二百数十年後、日本の夏空に蝉時雨(しぐれ)は響いているだろうか。
“やがて死ぬけしきは見えず蝉の声”(蝉鸣阵阵,死亡又有何惧),这也是芭蕉的诗。人生短暂,倾听蝉鸣能让人想到生命的无常。在环境巨变的世界,“俳圣”似曾倾其鸣叫的蚱蝉,其前路也已多艰,命运无法预测。二百二十多年后,同是日本夏季,同是一片蓝天,还能听到阵阵蝉鸣吗?