母やっぱり大きい、父の背中。「お前は母さんのコピーだ」
父はよく私にこう言う。母と一緒で、私も父に厳しいことを言うからかもしれない。
父は、どこにでもいる普通のサラリーマン。これといった特徴もなく、ぱっとしない。酒に呑まれ、母によく怒られる。そんな父を私は反面教師にしていた。
私は大学に進学し、一人暮らしを始めた。何から何まで自分でやらなければいけなくなった。社会人と接する機会も増えた。アルバイト先では上司に叱られながら、お金を稼ぐことの大変さを体験した。父は還暦を迎え、少しはのんびりしてもいい年齢だ。が、年々老いていく体にムチを打ち、何一つ文句も言わず、家族を養うために働いている。
子供の頃、よく父にいろんな所に連れていってもらった。休みの日の家族サービスは、父親なら、あたり前だと思っていた。だから、休日に家でゴロゴロする父の姿をみて、だらしがないと思ったりもした。しかし、最近になって休みの日がどんなに大切なのかを知った。
学校とバイトで朝から夜まで家の外。週末はサークル。休みなどない。一日でも体を休めたらと思ったりする。きっと父もそうだったに違いない。朝から夕方まで仕事。その後は取引先との付き合い。その上、土日は、母と私たちへの家族サービス。そしてまた仕事。その繰り返しなのだ。たまにゆっくりできる日も、仕事の電話で呼び出される。だが、そんな父から、不満は一度も聞いたことがない。
今思えば、父に対して理不尽なことをよく言った。今、ようやく父のすごさがわかった。二年後、私も社会人になる。
父は私の目指す目標だ。面と向かってはなかなか言えない。「父さん本当にありがとう。これかもよろしくお願いします」
私は心の中で、東京から沖縄の空の方に向かって叫んでいた。