日语学习网
「打ちゃ当たる?」
日期:2017-09-06 10:36  点击:334
家内が嫌な顔をする私の趣味にカメラがある。家内の目から見れば、同じにしか見えないようなレンズを幾つも欲しがるものだから、叱られるのも当然だ。まして何時もピンボケばかりで上達しないのだから。
言い訳はある。チョーがつく程のド近眼なのだ。運動会やお遊戯会の写真を撮ろうとしても我が子が何処にいるか分からない。分かったとしても、現像した写真を見て、初めて子供の表情分かるくらいだから、もともと向いていないのだ。半開いた目の写真なんて山ほどあるから、フィルムカメラの時代ならば、離婚訴訟に発展していたかもしれない。
父もカメラが好きだった。私と違い、子供の頃の私や兄の写真はどれも実に上手く撮れている。
問題は、弟や妹の写真が弟や妹の写真が少ないことだ。父は、子供が出来る度に自分の小遣いを減らしていた。煙草は最後まで止めなかったが、それ以外はずいぶんと節約していたから、必然的に現像代のかかく写真はあまり撮れなくなった。そして父は、私が高校二年生の年、四十六才で亡くなった。弟や妹の写真を撮る人はつまり、いなくなった。八番目の末妹は当時二才だった。考えればすぐに気づくことだが、高校からずっと親元を離れていた私は、そんなことも分からなかった。
妹が結婚式を迎えるとき、子供の頃の写真が少ないことに驚いた。代わりに、高校生以降の写真が極端に多かった。自分で撮るようになったのだ。よほど写真の少ないことを寂しく思っていたのだろう。
「お父ちゃん、写真撮って!」
六人の子供達はそう言って、私に向かいポーズをとる。私もカシャカシャとシャッターを押す。写真が少なくて寂しい思いはさせたくないのだ。たとえ父のように上手ではなくても数打ちゃ当たる。父の時代と違って、現像代を考えなくていいのだから。ただ、これだけは父に自慢したい。「今年になって煙草を止めたよ」と。四十六才までは、あと二年だ。

分享到:

顶部
11/29 22:33