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那須
日期:2017-12-02 21:42  点击:310
原文
那須の黒ばねと云所に知人あれば、是より野越にかゝりて、直道すぐみちをゆかんとす。遥に一村を見かけて行に、雨降日暮る。農夫の家に一夜をかりて、明れば又野中を行。そこに野飼の馬あり。草刈おのこになげきよれば、野夫やふといへどもさすがに情なさけしらぬには非ず。「いかゞすべきや。されども此野は縦横にわかれて、うゐうゐ敷旅人の道ふみたがえん、あやしう侍れば、此馬のとゞまる所にて馬を返し給へ」と、かし侍ぬ。ちいさき者ふたり、馬の跡したひてはしる。独は小娘にて、名をかさねと云。聞なれぬ名のやさしかりければ、
 
かさねとは八重撫子の名成べし 曽良
 
頓やがてて人里に至れば、あたひを鞍つぼに結付て、馬を返しぬ。
 
那須野の芭蕉と曾良
 
 
現代語訳
那須の黒羽という所に知人がいるので、これから那須野を超えてまっすぐの道を行くことにする。
 
はるか彼方に村が見えるのでそれを目指して行くと、雨が降ってきて日も暮れてしまう。
 
百姓屋で一晩泊めてもらい、翌朝また広い那須野の原野の中を進んでいく。
 
そこに、野に飼ってある馬があった。そばで草を刈っていた男に道をたずねると、片田舎のなんでもない男だが、さすがに情けの心を知らないわけではなかった。
 
「さあ、どうしたもんでしょうか。しかしこの那須野の原野は縦横に走っていて、初めて旅する人が道に迷うことも心配ですから、この馬をお貸しします。馬の停まったところで送り返してください」
 
こうして馬を借りて進んでいくと、後ろから子供が二人馬のあとを慕うように走ってついてくる。
 
そのうち一人は女の子で、「かさね」という名前であった。あまり聞かない優しい名前だということで、曾良が一句詠んだ。
 
かさねとは八重撫子の名成べし 曽良
(意味)可愛らしい女の子を撫子によく例えるが、その名も「かさね」とは撫子の中でも特に八重撫子を指しているようだ。
 
それからすぐ人里に出たので、お礼のお金を馬の鞍つぼ(鞍の中央の人が乗るくぼんだ部分)に結び付けて、馬を返した。

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