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雲巌寺
日期:2017-12-02 21:43  点击:400
原文
当国雲岸寺のおくに、仏頂和尚山居跡有。
 
竪横の五尺にたらぬ草の庵
むすぶもくやし雨なかりせば
 
と、松の炭して岩に書付侍りと、いつぞや聞え給ふ。其跡みんと雲岸寺に杖を曳ば、人々すゝむで共にいざなひ、若き人おほく道のほど打さはぎて、おぼえず彼麓に到る。山はおくあるけしきにて、谷道遙に、松杉黒く苔したゞりて、卯月の天今猶寒し。十景尽る所、橋をわたつて山門に入。
 
さて、かの跡はいづくのほどにやと、後の山によぢのぼれば、石上せきしょうの小庵岩窟にむすびかけたり。妙禅師の死関、法雲法師の石室をみるがごとし。
 
木啄も庵はやぶらず夏木立
 
と、とりあえぬ一句を柱に残侍し。
 
 
現代語訳
下野国の臨済宗雲巌寺の奥の山に、私の禅の師である仏頂和尚が山ごもりしていた跡がある。
 
「縦横五尺に満たない草の庵だが、雨が降らなかったらこの庵さえ必要ないのに。住まいなどに縛られないで生きたいと思ってるのに残念なことだ」と、松明の炭で岩に書き付けたと、いつか話してくださった。
 
その跡を見ようと、雲巌寺に杖をついて向かうと、ここの人々はお互いに誘い合って案内についてきてくれた。若い人が多く、道中楽しく騒いで、気付いたら麓に到着していた。
 
この山はだいぶ奥が深いようだ。谷ぞいの道がはるかに続き、松や杉が黒く茂って、苔からは水がしたたりおちていた。
 
さて、仏頂和尚山ごもりの跡はどんなものだろうと裏山に上ると、石の上に小さな庵が、岩屋にもたれかかるように建っていた。
 
話にきく妙禅師の死関や法雲法師の石室を見るような思いだった。
 
木啄も庵はやぶらず夏木立
 
(夏木立の中に静かな庵が建っている。さすがの啄木鳥も、この静けさを破りたくないと考えてか、この庵だけはつつかないようだ)
 
と、即興の一句を柱に書き残すのだった。

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