むかしむかし、大きな森のはずれに、ちっぽけな家がたっていました。
家の中には、ウィルヘルムという男の子がお母さんと二人きりで住んでいました。
ところがひどい貧乏なので、ウィルヘルムは学校へ行くこともできません。
毎日、森でたきぎを集めて、それを町へ売りに行ってお金にかえていました。
ある日の事、いつものように森の中でたきぎを集めていると、
「ぐえっ、ぐえっ」
と、かえるの鳴き声がしました。
ウィルヘルムが鳴き声のする方へ行くと、大きなキツネが青がえるを捕まえて、いまにも食べようとしています。
「まて!」
ウィルヘルムは、キツネをなぐりつけました。
するとキツネは、びっくりして青がえるをはなすと、森の中へと逃げていきました。
「なんて、かわいいかえるだろう。家で飼ってあげよう」
男の子は青がえるを上着のポケットに入れて、たきぎのたばをかついで家に帰っていきました。
「お母さん。ほら、こんなにきれいなかえるだよ。この青がえるを飼ってもいい?」
ウィルヘルムはお母さんに、青がえるがキツネに食べられそうになったことを話しました。
「それなら飼ってもいいけど、よく世話をするのですよ。死なせたらかわいそうだから」
「うん」
ウィルヘルムは、さっそく大きなおけに水を入れて、その中に青がえるをはなしてやりました。
さて、それから不思議なことがおこりました。
いつ、だれが入れたのか、たんすの中からたくさんの金貨が出てきたのです。
お母さんはそのお金で、ウィルヘルムを村の学校に行かせました。
ウィルヘルムはとてもよく勉強ができたので、村の学校を卒業すると都の学校に行き、とうとう立派な学者になりました。
(わたしたちが、こんなに幸せになれたのも、青がえるのおかげだわ)
そう思って、お母さんはウィルヘルムのいない間も、青がえるの世話を一生懸命しました。
ある日、ウィルヘルムがひさしぶりに自分の家へもどってきました。
ウィルヘルムは、おけの中にいる青がえるのところへ行って言いました。
「ぼくは立派な学者になることができた。お前もこっちのテーブルのそばへ来て、一緒に食事をしておくれ」
「ケロッ、ケロケロ」
青がえるはうれしそうに返事をすると、おけから飛び出しました。
するとそのとたん、青がえるは美しい娘さんに変わったのです。
お母さんもウィルヘルムもびっくりしていると、娘さんが言いました。
「わたしは森の妖精です。一生懸命働いているあなたを見て、何かしてあげようと青がえるに姿を変えていたのです。たんすの中へお 金を入れたのもわたしです。あなたは思った通りの、とてもやさしい人です」
ウィルヘルムは、この娘さんをお嫁さんにして、お母さんと三人でいつまでも幸せにくらしたそうです。