むかしむかし、ピアンと言う、とても働き者のお百姓がいました。
ピアンは小人の様に小さかったですが、ピアンの作る野菜はとてもおいしいと、みんなの評判でした。
ある朝の事です。
ピアンがカボチャ畑へ行ってみると、昨日まで見事になっていたたくさんのカボチャが、さんざんに荒らされています。
「誰が、こんなイタズラをしたんだ? 神さま。こんなイタズラをした奴を、どうかこらしめてください!」
ピアンは家へ帰ると、ふと、良い事を思いつきました。
「そうだ。カボチャ畑にかかしを立てて、イタズラをしに来た奴をおどしてやろう」
そこでピアンは、大きなかかしを作りました。
でもかかしだけでは、驚かないかもしれません。
「ついでに、かかしに生ゴムを塗りつけてやろう。そうすればイタズラをした奴は、かかしに塗った生ゴムがくっついて離れなくなるだろう」
ピアンはそう考えると、チューインガムの様にベタベタする生ゴムを、たっぷりとかかしに塗りつけました。
そしてそのかかしを、カボチャ畑のまん中に立てました。
「はてな? あれはなんだろう?」
その様子を見て森の中から出て来たのは、イタズラもののサルです。
最初は不思議そうにかかしを見ていましたが、かかしが全然動かない作り物だと分かると、 「よし。こうしてやれ」
と、サルはかかしの体にパンチをしました。
するとかかしの生ゴムがベッタリと手について、手が離れなくなりました。
「ええい、こんちくしょう」
怒ったサルは、かかしにキックをしました。
すると足もかかしに引っ付いてしまい、サルは動けなくなりました。
「あーん、あーん、あーん。助けてくれえー」
サルは、泣き出しました。
「さあ、捕まえたぞ。イタズラザルめ。カボチャは、お前がやったんだな!」
ピアンに捕まったサルは、泣きながらピアンに謝りました。
「キッキー。お許しくださいピアンさま。もう二度と、イタズラはいたしません」
「ふん。そんな事で、だまされるもんか」
「本当です。本当に、もう二度とイタズラはいたしません
サルがあんまり謝るので、心やさしいピアンはサルを許してやりました。
「よし、今回だけは許してやろう」
「ありがとうございます、ピアンさま。お礼に、おっしゃる事なら何でもいたします」
「ふん。大きな事を言う奴だな。???それならこのわしを、お城に住める様にしてくれるか?」
ピアンは、からかって言ったのですが、
「はい。お安いご用です」
と、サルは約束して、森の中へ帰って行きました。
「おもしろいサルだ」
ピアンは、サルの言う事などあてにはしていませんでしたが、サルの方は本気です。
サルは森の奥の奥にある、オニのお城まで走って行くと、
「た、た、大変だあー!」
と、叫びながら、お城の門の前で穴を掘り始めました。
「何だ。サルめ。何をあわてて、穴など掘っておるのじゃ?」
集まって来たオニたちが聞くと、サルは血相を変えて言いました。
「何を、そんなのんきな事を! いいですか、実は隣の国の兵隊が、百頭のゾウに乗って攻めて来るんですよ。だからわたしは踏み潰されない様にと、ここに穴を掘って隠れるつもりなのです」
サルの言葉に、オニのお城は大騒ぎになりました。
「大変だ、いくらおれたちでも、百頭もゾウに攻めて来られてはたまらない。早くおれたちも穴を掘って隠れよう」
「いや、今から穴を掘っても間に合わないぞ! それよりも、お城の井戸(いど)の中へ隠れるんだ」
こうしてオニたちは、次々と井戸の中へ飛び込みました。
そして最後のオニが飛び込むと、サルは重い石を持って来て、井戸の上にかぶせました。
「さあ、これでもう出られないぞ。ではピアンさまをお迎えに行こう」
こうしてピアンは、サルのお陰でお城を手に入れて、一生幸せに暮らしました。