むかしむかし、さむい北の国に、子どものいないおじいさんとおばあさんが住んでいました。
「おじいさん、たった二人きりですと、さびしいですねえ」
「そうだね。せめて、子どもがいればいいのに」
おじいさんがふと窓の外を見ると、子どもたちが大きな雪だるまをつくっていました。
「ほら、おばあさん、外を見てごらん。子どもたちが雪遊びをしているよ」
「あら、本当ですね。みんな、楽しそうに」
「そうだ、おばあさん。わたしたちも、雪だるまをつくろう」
「はい、そうですねえ。それならボウシをかぶって、手ぶくろをはめて、長ぐつもはいている、かわいい女の子をつくってみましょうよ」
「うん、そうしよう」
おじいさんとおばあさんはうれしそうに外へ出ると、庭(にわ)のまん中に雪を集めて、かわいい雪の女の子をつくりました。
「おばあさん、この子に何て名前をつけようか?」
「そうですねえ。女の子ですから、かわいい名前の???」
おばあさんが考えていると、
「わたしは、カーチャ」
と、とつぜんその雪の女の子が口をきいて、おじいさんとおばあさんに飛びついてきたのです。
白いほっペたはみるみるピンク色になり、炭(すみ)でつくった黒髪と大きな黒い目は本当の黒髪と目になりました。
おじいさんとおばあさんは、大喜びです。
さっそく女の子を家に連れてくると、
「カーチャ、今日からお前は家の子だよ」
と、言って、洋服をつくってやったり、リボンをむすんでやったり、新しい長ぐつを買ってやったりと、それはそれは大切に育てる事にしたのです。
さて、冬が終わって雪がすっかりとけてしまうと、カーチャはだんだんと元気がなくなってきました。
「カーチャ、森へ遊びに行きましょう」
近所の友だちがカーシャをよびに来ましたが、カーシャは首を横に振ります。
「いやよ。外はあついんですもの」
「まあ、カーチャ。森へ行けば、とてもすずしいわよ。小川の水はつめたくて、いい気持ちよ」
みんなが言うと、おじいさんとおばあさんも言いました。
「そうだよ、カーチャ。たまには外で、遊んでおいで」
「???うん」
そこでカーシャは、しぶしぶですが、みんなと森へ出かけました。
でもほかの子は楽しそうに遊んでいるのに、カーシャはたった一人で一日中、小川で足をひやしていました。
「カーチャったら、おかしな子ね」
タ方になると、みんなはたき火をしました。
「ねえ、みんなでたき火の飛びっこをしましょう」
誰かが言うと、みんなが賛成しました。
「じゃあ、わたしが一番よ」
「二番は、わたし」
それからみんな順々に飛んで、残ったのはカーシャ一人です。
「あら、カーチャがまだね」
「どうしたのカーチャ。飛ばないの? 飛ベないの? こわいの?」
みんなに言われて、カーシャが答えました。
「あたし、飛びたくないの」
するとみんなは、笑いながらカーシャに言いました。
「わかったわ。カ一チャは、たき火がこわいのよ。弱虫(よわむし)なのよ」
「そうよ、そうよ。カーチャは弱虫よ」
するとカーシャは、みんなを見て言いました。
「???あたし、弱虫じゃないわ!」
カーシャは決心すると、勢いよくたき火の上を飛びこえました。
ピョーン。
「ごらんなさい、飛んだでしょう。あたしは、弱虫じゃないわ」
ところがカーシャのピンク色のほっぺたがみるみる白くなって、やがて手も足も体も消えてしまいました。
寒い冬の雪から生まれた女の子は、ちょうど雪がとけるように消えてしまったのです。