こうして ひとり
雨の呟きを聞いていると
存在だけが 体温と共に
水墨画の中の 一つの情景となって
故郷の山々の中に
溶け込んでいく
私を抱きあげて
私の生きている重さを感じて
仕合せだと 云ったあなた
互いの想いが 季節に染まっていって
枯葉色の木の葉たちといっしょに
風の向こうに 飛び去ってしまった
秋の夜だというのに
一匹の甲虫が 光を求めてきた
落葉の下で暮らすのは
光へ向かって翔ぶよりも
苦しいことなのか
心 通い合い
ただ見つめるだけで 話ができる
黙って何時間でも お喋りできる
そんなあなたと 暮らしたかった
夢は はかないから美しい
だからこそ
あなたと いっしょに生きたかった
想い出が
窓に 腰かけて
風の歌を聞いている
空気が 透き通って
心が 透明になっていく