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コノハチョウ
日期:2018-06-22 16:36  点击:294
萌黄色の葉うらに
いのち
いま ひとつの 生命 がうまれた
 
太陽は樹々に惜しみなくふりそそぐ
枝は幾重にもかさなり
網の目のような空
風は梢を揺らすだけで
葉ずれの音や
小枝のゆらぎさえもみせない
 
したたる緑のなか
脱皮をくりかえす蝶の幼虫
そのすがたはつややかで黒い
蛹になる前の幼虫は
木の枝を足場にして糸を吐く
からだは命網の先端へぶらさがる
大きく つよく
振り子のように
それは地上に転落する危険を
孕みながらの脱皮で
まさに生と死とのわかれ道だ
目前にみるこの小さな生命の滴りを―
『どうかうまく脱皮できますように』
わたしは祈りつづける
 
蛹は枝を伝い選ぶように葉うらへと移動する
やがて羽化が近づく
風は力を弱め蛹にむかって
せいいっぱいの拍手をおくる
光は慈愛にみちたまなざしで
あふれる賛歌をおくっていた
羽化した蝶は全身に生命がみなぎりはじめる
前ばねの先は尖り橙色の斜帯
はねの裏には
典型的な枯れ葉模様のみごとなすがた
擬態を宿命として
ひたすら生きるけなげな生命
その名はコノハチョウ
肩書きは誇り高い沖縄の天然記念物
コノハチョウの旅立ちがはじまる

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